9月23日、ニューヨークの国連本部で「気候行動サミット」が開催され、来年本格始動する「パリ協定」の下で地球温暖化対策を強化する方向性を明確にした。この会議の主役に祭り上げられたのが、スウェーデンのグレタ・トゥーンベリさん(16才)である。グレタさんは、「パリ協定」の掲げる目標を達成するため温暖化対策の即時実行を訴えた。彼女は、温暖化阻止を求める若者による世界的運動の火付け役であり、ノーベル平和賞にノミネートされていた(今年の受賞はならなかった)。
「経済成長を止めないかぎり 温暖化も止められない」に共感
サミットで彼女が、各国の首脳らに対して「あなたたちが話すのは、金のことと永遠の経済成長というおとぎ話だけ」と述べたことには共感できる。経済成長を止めないかぎり、環境破壊や資源枯渇は止まらない。そしてそのことが若者の未来を奪う。
しかし、彼女が求めるパリ協定遵守は何をもたらすか。パリ協定は2015年、原発大国であるフランスで開催されたCOP21で採択された。その閉幕に合わせてオランド仏大統領とオバマ米大統領が会見し、オバマ氏は化石燃料に頼った経済発展は「汚れた段階」として、CO2を排出しない「クリーンエネルギーとして再生可能エネルギー・原子力などの分野で各国の投資を求めた」(「京都新聞」2015・12・1)。
そして、COP21が根拠とする「IPCC第5次報告書」も原子力発電について「成熟した温室効果ガスを出さないベースロード電源」として推奨している。また、日本の経産省による「第5次エネルギー計画」も、パリ協定にもとづいて原発を20~22%の重要な「ベースロード電源」と位置付ける。
2011年、福島原発事故が起きた。福島県の人々は現在も約4万人が県内外に避難し、廃炉の見通しは全く立たない。そして、日本で世界で次の原発事故が迫っている。福島での経験からもわかるように、ひとたび原発事故が起きれば、取り返しがつかない被害をもたらす。私は何よりもまず世界から原発を廃絶すべきと考える。グレタさんの暮らすスウェーデンも総発電量の50%を原発に依存する原発大国である。
原発推進のために グレタさんを利用させるな
グレタさんを祭り上げる世界の首脳らは、CO⒉削減を旗印にして原発廃絶の流れを押しとどめ、原発と再エネ発電による経済成長をめざしている。「永遠の経済成長」を批判するグレタさんは、このような人たちに利用されてはならない。
まず原発を廃絶したうえで、化石燃料の使用量も減らして経済成長至上主義を止めるべきだ。グレタさんはパリ協定と決別しなければならない。