ILO報告によると、世界労働人口は35億人で、歴史的に最大。労働者崩壊論は間違いである。35億人の大部分は「物質的安寧、経済的安定、人間的発展」のための平等な機会を欠いている。雇用は必ずしも豊かな生活を保障するものではない。61%が非正規雇用だからだ。
低賃金で、社会的保護や働く権利へのアクセスがない、とILOは報告している。しかし、極端なワーキング・プアの減少も指摘している。これは中国経済発展の影響である。貧しかった人々の所得増加データがあげられているが、貧困からの脱却には程遠い。ある経済学者の計算では、「平均的労働者の収入は36年間で約1200ドルの増加」であった。
「2019~21年の生産性向上は、1992~2018年期間のグローバル平均2・1%を上回る」とILO。これも中国の経済発展の影響で、かつての先進諸国の生産性は停滞している。しかし生産性向上の果実は、それに貢献した労働者に還元されていない。圧倒的部分が資本家のもとに集中し、人類の幸福増進に貢献していない。
我々「コンチネンタル」社会研究所は、現代の支配的な誤解を研究し、解説した。一つは、世界的労働人口の減少という誤解だ。オートメーション化と雇用の不安定化から労働力減少論が生まれたが、これは事実に反する。労働者数は増えている。しかも、多くは製造業労働者だ。西側社会で「工場逃亡」や「脱産業化」が叫ばれているにもかかわらず、だ。
グローバル労働者の増大 深刻化する貧困問題
二つめは、貧困減少という誤解だ。事実は、労働者の数が増え、彼らの生産性も上昇し、富の生産への貢献が大きくなっているのに、貧困は相変わらず深刻な問題である。生産性向上(テクノロジー向上がその理由の一つだが)にもかかわらず貧乏であるのは、生産性向上の果実、剰余価値が労働者に相応な分け前としてわたってないためだ。社会福祉の解体も大きな原因である。つまり、マルクスが開発した概念「搾取率」の拡大で説明することができる。
マルクスは搾取を二つの領域で論じた。一つは倫理領域で、特に児童労働への残酷な搾取に激高した。もう一つは科学的分析としての搾取である。資本家は労働力として労働者を雇うが、労働者は資本家が支払う賃金以上の価値、剰余価値を製品に付加する。増加した価値の圧倒的部分は資本家の懐に入り、労働者に還元されない。その割合を搾取率と言い、マルクスはそれを計算できるとした。
アップル社はiPhone11を売り出した。iPhone10と比べて、価格が高いのと3種のカメラ機能がついている以外は、ほとんど変わらない。アップル社が製造しているわけではない。中国だけで130万人の労働者を雇っている台湾のフォークスコンに製造させている。しかし、売り上げ原価の大部分は労働者やフォークスコンではなく、知的財産権を持つアップル社に入る。
「トリコンチネンタル」社会研究所は、iPhoneの搾取率を研究した。労働者が製造過程でどれほど価値創造に貢献しているかが、搾取率によって分かる。一見労働者の賃金が上がっている場合でも、製造過程の効率化や機械化という魔法のために、搾取率は上がっている。
研究結果は、現代のiPone労働者が19世紀英国の紡績労働者よりも25倍も多く搾取されていることを明らかにした。iPhone労働者の搾取率は2458%。この数字が示しているのは、賃金となるのは労働者の1日労働のごく一部分で、労働者は1日のほとんどを資本家の懐に入る富を作り出すために働いているということだ。