「幼児教育・保育無償化制度」10月スタート
今年5月10日、「すべての子どもが健やかに成長するように支援する」ことを基本理念に、「改正子ども、子育て支援法」が国会で成立した。また、10月から消費税を財源として「幼児教育・保育無償化制度」が実施された。しかし、この制度から朝鮮学校付属幼稚園などの外国人学校幼児施設だけが排除された。
全国の幼児教育・保育施設5万5千カ所のうち、0・15%にあたる88カ所の各種学校認可の外国人学校の幼稚園が排除された。そのうち40施設は、「高校無償化」制度からも排除されている朝鮮学校の幼稚園である。政府は、排除の理由について、「各種学校は、幼児教育を含む個別の教育に関する基準はなく、各種多様な教育を行っており、また、児童福祉法上、認可外施設に該当しないため、無償化の対象にならない」としている。
こうした排除は、多様性が尊重される豊かな社会の実現という観点からも決して容認できない。朝鮮幼稚園は、母国語を中心に幼児教育を行い、それ以外は日本の幼稚園と変わらない幼児教育を行っており、しっかりとした保育の実態も備えている。
母国語を学び民族的アイデンティティーを育む教育を受ける権利は、子どもの権利条約で国際法上認められており、その権利実現のために措置を講ずることは、締約国である日本政府に課せられた義務である。
朝鮮幼稚園が多種多様な教育を行っている各種学校であることを理由に無償化から排除することは、こうした権利を奪うことでもある。
「すべての子どもの中に朝鮮の子どもは入らないのか」、「幼い子どもまでも差別するのか」、「子どもたちが健やかに成長できる学びの場を奪わないで」、「自分を育んでくれたウリハッキョ(我々の学校)で我が子も学ばせたい。そのためにも、ハッキョを守りたい、つぶしたくない」、「朝鮮学校の実態を見てほしい」…。
「幼保無償化」の適用を求め、大阪府・市に政府への働きかけを求める要請書を提出した朝鮮初級学校付属幼稚園のオモニ、アボジたちは涙ながらに訴えた。
子どもの学ぶ権利の機会均等と民族教育の保障を求める「高校無償化」制度排除に加えて、8月27日、最高裁はこうした大阪と東京における裁判の上告を棄却した。
朝鮮学校への繰り返される差別 在日外国人の「民族教育権」の保証を
補助金停止、そして今度は、幼い子どもまでも「幼保無償化」制度から除外したのである。朝鮮学校に対して繰り返し露骨な差別、弾圧が行われている。敗戦後、日本は朝鮮への植民地支配に対する清算をせず、東西冷戦構造の中で、責任を逃れた。そのため、在日朝鮮人への同化、排外主義は連綿として継続している。
近年、ますます排外主義が高まり、朝鮮学校・在日朝鮮人への差別、攻撃は「官民あげて」という様相を呈している。また、日韓関係を悪化させてきた傲慢で卑劣な対韓政策にもつながる。在日外国人の人権、「民族教育権」が保障される時、私たち日本人自身の人権も保障される社会となるであろう。
この社会に生きるすべての子どもたちの尊厳が平等に守られる明るい未来を切り開くために、諦めることなく、今後も連帯して闘いを継続していきたい。