【米国】全米自動車労働者組合(UAW) 12年ぶりのストライキ

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「Labor Notes 2019夏号」より 翻訳・脇浜義明

 9月15日、UAWはGMに対し、雇用と賃金をめぐって12年ぶりにストに入った。1970年UAWの40万人労働者が2カ月間のストで米経済を2%減退させ、大統領が賃上げを勧告したことがあった。1940年代にはウォーター・ルーター会長のもとで「物価値上げを伴わない賃上げ」を標榜した前衛的労組(組合員数百万人以上)であったが、その後組合員減少や幹部の腐敗や汚職で弱った組合が、ストに入ったのだ。  

GMは、若干の賃上げ、8千ドルの入社時ボーナス、70億ドルの設備投資を回答したが、労働者は臨時雇用や下請けなどの二層雇用による格差問題が解決していないとして、ストを継続した。非正規労働者の賃金は最高でも時給15・18ドルで、正規労働者の時給31ドルの半分。ストには、下請け会社からの清掃派遣労働者も合流している。  

スト労働者は、週250ドルのストライキ手当をまだもらっていないうえに、GMはスト参加者の健康保険会社負担分を打ち切った。組合のスト基金(7億5千万ドル)とコブラ(解雇後も18カ月間保険が使える制度)で労働者は凌いでいる。ピケ・ラインで逮捕されたり、車両妨害で連行・拘留されたり、犠牲者が出ている。

 しかし、GMの手傷も大きい。かつて「フォーチュン500」の番付1位だったGMは現在13位。短期ストなら回復できるが、長期ストになると影響は大きい。ストによるGMのコストは、5千万~1億ドル/日だという。在庫もやがて枯渇するだろう。施設管理や清掃業者からの派遣労働者もストに参加しているし、スト破り人員や警備員などを大量に雇用しなければならない。また、組み立てラインをピケのない外部に移すなど、余分な出費に苦しんでいる。

 バイデンやサンダースなどの民主党大統領候補者がスト支援に訪れ、GMに「組合との合意」と勧告したが、GMストを世直し社会運動にまで成長させよと励ますべきだろう。  

GMとUAWの間で暫定合意が成立しても、労働者による批准投票がある。現状では現場が暫定合意に「ノー」を出しそうである。  

UAWのような大きな組合は、賃金や労働条件だけでなく、労働者の生活を破壊する産業構造を問題にする社会的組合であるべきだ。今回のストは、そういう力を作るチャンスになりうる。

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