【イスラエルに暮らして】パレスチナ攻撃を批判しない国際社会 民主主義に恐怖する帝国主義の暴力 イスラエル在住 ガリコ 美恵子

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選挙敗北・起訴を恐れるネタニヤフ

パレスチナ市民の住宅を爆破 撤去費用を家主に請求

 9月17日にイスラエルの総選挙が再び行われる。4月の総選挙で、ベンジャミン・ネタニヤフ率いるリクード党は120議席中35議席を獲得して第一党となり、連立政権を試みたが、右派の対立で成立しなかった。  

ネタニヤフは、政権に居続けなければ、汚職で起訴される。このため、米国ユダヤ資本をバックにもつユダヤ宗教右派・入植派の票獲得を狙うナタニヤフ政権は、パレスチナへのテロ、国際法違反、合意違反を続けている。  

7月22日、イスラエル当局はヨルダン川西岸のA地区とB地区にあるワディ・アル・フムス町(スール・バへル村)で、10棟の建物を撤去した。新たな入植地を建てるためだ。しかし同地はパレスチナ自治政府管轄地で、建築許可がある。だが、エルサレム最高裁は「分離壁に近すぎる」と、撤去判決をだした。イスラエル建国以来、初のことだ。 

夜中3時、数百人の武装警察が、催涙弾で住民を攻撃し、撤去。7階建ての上部はダイナマイトで爆破した。住民退去に携わった数百人の警官への労費、および瓦礫撤去費用にあたる計6千万円は家主に請求された。  

パレスチナ自治政府の行政管轄地区内での建物撤去は、オスロ合意違反である。国際法に違反してイスラエルが建てた分離壁に、近いからという理由で撤去したのは、歴史上初めてのことだ。  

撤去日の前夜、国際人権団体とイスラエル人左派が、「自主的退去はしない」という住民に付き添って泊まり込み、状況を記録した。  

座り込んだ国際連帯運動の女性は、警官に首を絞められ出血。この女性に4日後に会うと、首に横18㎝縦8㎝の赤黒いあざができていた。他の一人は顔を殴られ、ろっ骨を折られた。  

TV局と警察が やらせ番組作成

7月28日、民主主義を望む住民が多いイサウィヤ村(東エルサレム)の4歳の男児(写真左上)が、「投石の疑い」で警察署へ出頭命令を受けた。翌日、同村で5歳の男児も出頭命令。署の尋問員に、2人の男児は「投石していない」と主張し、帰宅が許された。  

5歳男児にインタビューした。「僕は投石していない。警察が家の前にきた時、僕は紙パックのジュースを飲んでた。警察が通り過ぎた時、空になった紙パックを道に捨てた。僕はなぜ警察に連れていかれるの?」。  

この夏、イスラエル国営TVが「イサウィヤ」と題したフェイク映画を放映した。撮影の際、映画撮影だと村人には明かさず、警官が急にやってきて「武器が隠されている可能性がある。庭を見せろ」と村人を脅した。銃が庭から発見された家主は、出頭命令を受けた。イスラエル市民はTVを観て、「イサウィヤは恐ろしい村だ、警察はいい仕事をしている」と感心した。

 一方、パレスチナ人は、その家が「イスラエルに協力した裏切り者ではないか」と不信感を持った。後日、警官が庭の物置小屋に機関銃を隠して映画撮影したことが、ハ・アーレツ新聞によって暴露された。TV局と警察は、イサウィヤの村人に謝罪したが、後日、別の村で同じことを行った。  

家屋を爆破したスール・バヘル村でも、警察は銃とピストルを隠し、同TV局が創作映画を放映した。「武器を発見した。警察の能力は素晴らしい」と自らを称える警官。武器が発見された家主に手錠、足錠をかけて身柄拘束した。後日、これも偽造だったことが判明し、TV局、警察は再び謝罪した。  

抗議を先導した人間 実は私服警官 疑心暗鬼を広める罠

8月に入ると、入植推進団体が神殿の丘(アクサ寺院)参拝を奨励したため、毎日多くのユダヤ人が寺院を参拝した。これは、自由に参拝が許されない西岸地区のパレスチナ人の怒りを誘発した。  

イスラム教の一大祭であるイード・エル・アドハの3日前、8月8日、「兵士(19)の死体が、グーシ・エツィオン(ベツレヘム、ヘブロン間の巨大入植地帯)で発見。拉致されかけ、揉め、10か所刺されて絶命」とニュースが伝えた。軍は犯人捜査を理由に、付近のパレスチナ町村へ侵攻した。殺された兵士を知るイスラエル人に話を聞いた。「宗教右派の入植地で育ったが、成長期に嫌になって家族からも宗教からも離脱していた。が、最近また宗教に立ち返った」という。    

8月10日、イスラエル国旗を掲げた入植団体がダマスカス門前を行進した。この日はちょうど、イスラム教の祭イード・エル・アドハの前夜で、多くのイスラム教徒が世界各国からアクサ寺院に礼拝に来ていた。礼拝帰りの民衆が抗議した。  

しかし、抗議を先導した男性4人は、私服警官だった。4人は警官に捕まるふりをして、彼らを助けようとした男性を検問室に連れ込んだ。そのとたん、最初に抗議を始めた人々は警官帽を被り、捕まえた男性に半時間、殴る、蹴る、ペッパースプレーを目に噴きかけるなど暴力を与え、連行した。これをみた私は、人が信用できない気持ちに陥り、混乱状態のままあらゆる人を撮影してしまった。これは人が連帯できないようにするためのワナだ。  

25日、民主主義を望む村民とイスラエル人左派との橋渡しを務める平和活動家、アブ・フムス(42)が逮捕された。理由は、「テロ工作の疑い」。6月末に地元青年が警察に射殺されて以来、イスラエル人左派はアブ・フムスの引率のもと、毎晩、村でテロを行う警察を撮影し、SNSなどで拡散してきた。それが警察にはうっとうしいのだろう。裁判官は、身柄拘束の必要なしとしたが、警察は、拘束し続けた。3日間連続で裁判が行われ、「9月15日まで村に帰ってはならない」という条件付きで釈放された。  

イスラエルがアラブ・パレスチナにテロを続けても国際社会から叩かれないのは、帝国主義の名残りだ。ネタニヤフと首相の席を競うガンズ(カホール・ラバン党)は、ガザを石の時代に戻してやる、と公言した。どちらが勝っても、帝国主義の暴力は続く。

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