【ぷりずむ】

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 あいちトリエンナーレの「表現の不自由展・その後」が中止に追い込まれた。これについては多様な論点がある▲まず、「芸術の専門職が芸術基準で作品を選ぶべきなのに、芸術監督自身が中止の判断をしたことが誤り」というもの。中止肯定への切り返しの一つではあるが、芸術の専門家の判断にしか正当性を認めないことは、政治と芸術を無関係のものとする芸術至上主義の問題がある▲犯罪の示唆以外は表現の自由で保障されるべきという見解もあるが、人権が基準だと言い切らない点で不足がある。人権を守るのが最も中心的な命題であり、表現の自由はその一つとすべきである。ヘイトスピーチや児童ポルノなど人権概念に反する表現は規制されて当然だ▲慰安婦問題を象徴する「平和の少女像」はデマを広げる反日行為という批判には、慰安婦問題を人権問題として正しく理解できていない、日本の多くの人の歪んだ認識が見える。慰安婦問題について正しく認識されていれば、少女像を憎むのではなく、これを通じて過去と未来に真摯に向き合おうとするだろう。慰安婦像への過剰な反発こそ今回の問題の本質であり、それを喚起する作品は極めてコンセプチュアルなアート作品と言える。(H)

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