白人至上主義との闘いの歴史から何を学ぶか 出典:The Real News.com. 2019.8.12 翻訳:脇浜義明

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マーク・スタイナー:エル・パソのテロ襲撃は白人至上主義の台頭と危険を全米に焼き付けました。次々と起こる極右暴力は例外的現象ではない。トランプ、4チャン、8チャン(訳注1:4chanも8chanもネット画像掲示板で、ネット右翼がよく使う下劣な匿名性のネット文化)等とそれを支えるレイシスト文化がるからで、突然無から生じたわけではありません。この国の誕生時から社会に嵌め込まれている文化です。

本日はその道の専門家 のジェラルド・ホーン博士をお招きしてその点についてお話をお伺いします。博士は歴史家で、アメリカ史は革命と反革命の連鎖から成り立っていると言っています。

ジェラルド・ホーン:ご招待ありがとうございます。

スタイナー:こうして直に話し合うのは素晴らしいことです。現在この国が直面している白人至上主義、オルタナ右翼、民族主義はこの国の歴史に深く根差したもんですね。あなたは歴史家で、15世紀を研究していると聞きました。

ホーン:1500年代、16世紀に関する本を執筆しています。16世紀は植民地主義国スペインが先発優位性を失っていった時期です。コロンブスのおかげでサント・ドミンゴ、キューバ、プエルトリコ、現在のフロリダ州のセント・オーガスティンに有力な足場を作り上げました。アフリカ人奴隷がアメリカにやってきたのは1619年だと言われていますが、すでにスペインは1520年代からサント・ドミンゴからセント・オーガスティンにアフリカ人を運んでいました。

当時アフリカ人たちは地元の先住民と組んで反乱を起こし、スペイン人を苦しめました。  結局アングロ入植者がスペインに勝ったのですが、そのとき英国人が流した反スペイン・プロパガンダは、1945年の反日プロパガンダ、日本を邪悪で、腹黒く、コソコソして、悪魔のように卑劣な人種だとした反日プロパガンダを思い起こさせます。このときにプロテスタント英国またはアングロ入植者対カトリック・スペインという宗教対立の原型が作られたのです。

現在ラテンアメリカ人に加えられている残酷な暴力は、この宗教対立と殖民植民地主義という背景から歴史的に理解することもできます。  いずれにせよ、当時カトリック・スペインは権威ある存在でした。聖職者をセント・オーガスティンに送り込んで正統性を主張していたが、一方まとまりがなく負け犬的存在であったアングロ入植者たちは、スペインを出し抜くために、汎ヨーロッパ的姿勢を採用しました。(私これを皮肉を込めて言っています)ヨーロッパ人をどんどん入植者として受け入れて入植者の数をラテン系スペインより多くして、最終的にはスペインに勝ったのです。

スタイナー:意識的政策ですか。

ホーン:政策とまでは言えないとしても、事実としてそういうやり方だったのです。  居座った北メキシコを米国領にしたサミュエル・ヒューストン(訳注2:テキサス共和国大統領、米国テキサス州知事となった軍人)とスティーヴン・オースティン(訳注3:テキサスへのアングロ人の入植を推進した人物で、テキサスの父と呼ばれた)を見てみましょう。

1820年代メキシコは奴隷廃止の方向へ向かっていました。ヒューストンもオースティンも大奴隷所有者のアングロ入植者でした。このため1836年にメキシコから分離してテキサス共和国を名乗りました。テキサス共和国は奴隷貿易国です。アフリカ系子孫のビンセント・ゲレーロ大統領のもとで、メキシコは奴隷廃止の方向へ向かっていたので、メキシコとテキサスの対立はエスカレートしました。テキサス共和国は奴隷廃止を唱える英国や、奴隷反乱が成功して初めて自由アフリカ人による国家を樹立したハイチ革命を嫌い、1845年に米連邦の一部になりました。それによってメキシコ嫌悪が終わったわけではありません。

実際、メキシコ系人々に対する残酷な襲撃が頻繁に起きたのは100年前のメキシコ革命(1910~1920)のときでした。2,3日前にあったエル・パソのテロ襲撃が当時頻繁にあったのです。アングロ入植者やテキサス・レンジャーによる襲撃です。  

だからエル・パソ虐殺実行犯とされる人物がいわゆる「大いなる交代」(訳注3:ヨーロッパ白人世界を侵略して乗っ取ろうとする有色人移民から白人世界を取り戻そうという主張)を語ったとき、歴史研究者としての私は驚きませんでした。「大いなる交代」は2017年8月にシャーロッツビルで開催された極右集会「ユナイテッド・ザ・ライト・ラリー」のテーマでした。白人世界が奪われるという「大いなる交代」は反ユダヤ主義「シオン賢者の議定書」(訳注4:ユダヤ人が世界征服を企んでいるというでっち上げ文書)と一脈相通じています。数か月前にニュージーランドのクライストチャーチ・モスク銃乱射事件の犯人が語ったのも「大いなる交代」でした。「大いなる交代」脅威は移民ヒステリーのフランス白人から生じたようです。

スタイナー:ルノー・カミューの「大置換」(Le Grand Remplacement)概念ですね。

ホーン:そうです。注目すべきは、これは世界最大の経済国中国の台頭という文脈の中で生じていることで、それが文化的・地政学的に大きな影響を与えているのです。追い詰められた白人が白人至上主義運動を起こしたのです。  

明るい話題が一つあります。エル・パソで虐殺された人々の3分の1がメキシコ人であったことから、メキシコ政府が自国民保護に乗り出すと発表したことです。エル・パソは米国で22番目に大きい都市で、ラテン系住民が80%を占めています。メキシコ政府が立ち上がれば、人々はメキシコの裁判所に持ち込むことができるし、ワシントンDCに本部がある米州機構に持ち込み、カリブ海諸国の支援も得ることができるでしょう。  同じように、トランプが有色人進歩的女性議員4人に「元の国へ帰れ」とレイシスト発言をしたとき、ドイツのメルケル首相がそれを批判したのも明るい話題の一つです。

もともと米国の白人至上主義に対する闘いは国際的なものでした。奴隷廃止運動も外国からの輸入でした。テキサスの件で私が英国の奴隷廃止やハイチ革命に言及したことを思い出してください。1950年から1960年にかけアフリカ諸国が独立していったことも、米国政府の黒人差別法撤廃や公民権運動に押されていった背景理由です。国内で黒人差別をしながら新興アフリカ諸国と親交を結べないからで、これも輸入です。

スタイナー:あなたのおっしゃる通り、過去の歴史が現在にも生きていますね。1877年ラザフォード・ヘイズが大統領となって行ったレコンストラクション(訳注5:南北戦争の後の諸問題を解決しようとする1863~1877年の再建過程)を見てみましょう。

その頃すでにクー・クラックス・クランが南部で活動していました。ヘイズは怪しげな裏取引で史上稀に見る僅差で大統領になり(訳注6:南部から連邦軍を引き揚げることを条件に南部はヘイズの当選を黙認するという取引があり、このため南部で再び旧白人支配層が実権を握り、黒人差別が続いた)、南部の黒人迫害を温存させ、それが現在まで続き、トランプの「アメリカを再び偉大にしよう」につながっています。レコンストラクション、公民権運動、60年~70年代の諸運動、あるいはあなたが言及された国際社会の影響など、それら過去の歴史は現在につながっていますね。

ホーン:私は『1776年の反革命』を書きましたが、それが私の歴史研究の出発点となっています。(訳注7:アメリカ人は1776年の独立戦争を「アメリカ革命」と呼んでいる。ホーン博士は独立戦争をアメリカ入植者が奴隷制度を守るためと先住民との和平協定に反対するための反革命戦争だと分析している)この反革命は米国史全体に流れる一本の筋です。

1776年だけでなく、奴隷制を維持するためにテキサスがメキシコから分離した1836年もそうだし、南部諸州が奴隷制を維持したいために米国から分離した1816年にもそれが見られます。  レコンストラクションの矛盾は、連邦政府が南部の反動勢力に妥協したことです。連邦政府は違う方向へ向かう二頭の馬に乗っていたのです。一方では奴隷解放を掲げながら、一方では先住民から土地を奪うことに懸命になっていました。例えば和平条約を破って先住民の土地を奪う(先住民領土内にある金鉱を占領するため)カスター将軍がブラックヒルズ戦争がそうです。  

矛盾は絶えずあります。反革命伝統があるこの国で、逆行と前進を同時に行うことはできません。レコンストラクションはそれをやろうとしたので、最初から頓挫する運命にありました。現在でも同じ失敗をしないことが大切です。その点で気がかりなのは、民主党の進歩的大統領候補が外交政策と内政を切り離していることです。(訳注8:バーニー・サンダースのことを指している。サンダースは「パレスチナ以外で進歩的」と言われるように、内政面では社会主義的だが、国際政策では親イスラエルの体制派)

スタイナー:あの政治家が内政問題と国際問題の関係を論じることはめったにないですね。

ホーン:ちょっと言い過ぎだと思いますが、だいたいそのとおりです。我々が勝利するためには国際社会に流れ、例えばエル・パソ虐殺に関して私が言及したメキシコ政府の意向などに積極的組むべきです。奴隷廃止論もある程度英国の奴隷廃止論やハイチ革命の影響を受けたにもかかわらず、レコンストラクションはそれに逆行する要素を含んでいました。

あのメリーランド州のフレデリック・ダグラス(訳注9:元奴隷の活動家、政治家。後にアメリカ占領下ハイチ共和国の合衆国総領事を務めた)も結局米政府と組んでハイチを含むヒスパニオラ島を占領する総領事となり、その一方で解放された黒人をそこへ送り込んだのも、逆行と前進を同時に行おうとしたんです。

スタイナー:そういう視点から現在を見れば、我々は歴史から何も学ぶべきでしょうか。あなたの研究の大きなテーマは反革命です。1946年から1970年代初期までを米国を変えた革命期と見ることができますが、同時に反革命も生じています。

ある意味では60年代後半から70年代初めに反革命が起きて、それが現在政権を握るまでに至ったと言えるでしょう。そういうとき我々は歴史から何を学び、どういう戦略を用いるべきだと思いますか。

ホーン:国内問題で一つ言いたいことがありますが、残念ながら進歩的活動家の同意が得にくい意見です。労働組合のことです。

反差別運動の歴史を見ると労働組合の果たした役割は非常に大きいです。マーチン・ルーサー・キングの運動はUAW(全米自動車労働組合)第65支部の巨額の資金援助があったから進められたのです。1950~51年の黒人活動家・俳優・スポーツ選手のポール・ロブソンが国連へ米国の黒人ジェノサイドを訴えた運動も、西海岸港湾労働組合の絶大な支援があったからできたのです。この港湾労働者組合はアパルトヘイト商品を米国内で流通させないとして、シアトルからサン・ディエゴまでの波止場を封鎖するなど、反アパルトヘイト運動で中心的役割を果たしました。  

現在でも同じで、組合の参加がない大衆闘争の展望は悲観的にならざるを得ない。それにもう一つ大切なことは、米州機構、国連人権委員会、中国、ロシアなど国際的支援を得ることです。  現在トランプ支持層は6300万人。彼のレイシスト発言がエル・パソのテロを刺激したにもかかわらず、支持層は崩れていません。私の友人の中にはフォックス・ニュースのような偏向メディアが無くなれば大衆の右翼支持が無くなると考えている人がいますが、それは甘い考えです。

スタイナー:ええ、そうだと思います。

ホーン:そんなに単純であったからありがたいのですが。それに強調したいのはネオ・ファシズム的潮流を食い止めることの難しさです。

ネオ・ファシスト活動は着実に歩を進めています。裁判所の傍聴席を満席にし、社会安全ネットを引き裂き、金持ち減税を実現させています。それと同時にエル・パソのような暴力を引き起こしているのです。彼らと対決しなければなりません。

スタイナー:その対決について考えましょう。それについていろいろな人とインタビューしたり、話し合ったりするのですが、どうしても悲観的な気分になるのです。トランプ支持6300万人というのは、この国の白人の観半数がトランプ支持ということですよ。

ホーン:過去半世紀間に右翼は確実に白人票を獲得してきました。フォックス・ニュースがあろうとなかろうと、です。

スタイナー:60年代私はヤング・パトリオット(訳注10:60年代後半から70年代初めにかけて存在した政党で、白人低所得者支援を目的とし、人種差別に反対する運動を行った)といっしょに、黒人コミュニティ、先住民コミュニティ、ラティーノ・コミュニティと貧乏白人コミュニティをつなげる活動に従事しました。

1961年にミシシッピー州の黒人人口を減らす政策に基づいて赴任の身体にさせられたファニー・ルー・ヘイマーは、自分の自由農業共同組合に元KKKの貧乏白人を入れました。こういう統合的運動の中に労働組合の姿もありました。現在は労働組合の影は薄く、政治世界を構成しているのはリベラル穏健派民主党員と保守右翼共和党員だけという感じです。こういう情況を打破する戦略は過去の歴史から学び取れないでしょうか。

ホーン:1980年代反アパルトヘイト運動の頃に同じようなジレンマがありました。レーガン大統領が反アパルトヘイト包括法に拒否権を発動し、南アのネオ・ファシズムとアパルトヘイトに同情的な演説をしました。

この動きに対し、労働組合、学生運動、黒人コミュニティの反アパルトヘイト運動がありました。それがあったから、最終的に米議会が大統領拒否権を覆し、1986年に反アパルトヘイト包括法が成立しました。このことは、1994年に南ア最初の民主主義選挙が実現するのに大きな役割を果たしました。

2020年選挙への熱心な活動と準備は理解できるし、大切だと思いますが、その選挙で反トランプ候補者の味方をするのは大衆運動です。労働組合、学生集団、黒人コミュニティ、ラティーノ・コミュニティ、先住民コミュニティ等々が活動する共闘です。特にラテン系コミュニティは、ラテンアメリカ諸国、とりわけロペス・オブラドール大統領のメキシコと有機的つながりがあるので大切です。オブラドールはトランプとの対決姿勢を着実に強めています。彼の姿勢はメキシコがもっと解放的になる前兆、大変化が起きる前兆かもしれません。

スタイナー:楽しみですね。これまであなたが述べてきた歴史的闘い、特に人権擁護や奴隷廃止の国際的闘いと米国内のそれとの関連については、あまり語られてきませんでした。我々も自分たちの運動を国際的な動きと結び付けて考えることをしませんでした。  

最後に、この国で最近出てきた若い有色人女性議員たちの活動、市議会や州議会における進歩派の台頭、草の根のからの新しい労働組合運動の出現などについて一言お願いします。まだ主流になるほど強力ではありませんが、黒人コミュニティや先住民コミュニティでそういう新しい運動が息吹いています。これらの運動は我々が何者であるかを改めて見直す契機となると思うのですが。

ホーン:先住民が先祖の闘いの歴史と伝統を踏まえて環境破壊問題や人権と生活破壊問題に取り組んでいることに、それが典型的に見られます。彼らは殖民植民地主義との闘いとはっきり明言しています。

この言葉は米国左翼の談話には出てこない言葉です。しかし、殖民植民地主義こそ米国の本当の姿で、この言葉を発動することによって、現在の白人至上主義的ネオ・ファシズム危機を理解でき、我々が何者であるかを改めて見直すことができます。  あなたと同じように、私もこの運動に期待しています。

特にサンライズ・ムーヴメントのような気候変動に関する運動の台頭に期待しています。これは大衆行動を予告する運動です。黒人差別法やアパルトヘイトを打ち砕いたのと同じ大衆行動、既存の価値基準を打ち砕くような大衆行動を予告するような運動です。私は南アの反アパルトヘイト運動の中であった飛行機のフリーダム・ライド運動について書いたことがあります。南アの占領下にあったナムビアに、ビザ申請を拒否して飛行機で侵入、空から大量のビラ撒いたフリーダム・ライダーたちの奇抜な闘いです。

こういう新規戦略がたくさんあって大衆行動を盛り上げ、ついに反アパルトヘイト運動が勝利したのです。それと同じような性質をサンライズ・ムーヴメントの活動家の中に見られるのです。

スタイナー:楽しい話ですが、もう時間となりました。本日はありがとうございました。

ホーン:ありがとうございます。

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