【贈呈本紹介】チェルノブイリと手を結ぶ 評者 編集部 谷町 邦子

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 今年5月に「国際チェルノブイリ連盟」が「国際チェルノブイリ福島連盟」という名になったことを、どれぐらいの人が知っているだろうか。日本のメディアが黙殺する中、ジャーナリストの浅野健一さんが同連盟の総会を取材。ウクライナと日本の市民団体の連帯やメディアのあり方について記した。  

小若順一氏が代表を務める市民団体、「食品と暮らしの安全基金」が、ウクライナ各地での実践を通して、若者・子どもたちが訴える身体の痛みの原因を、空間や食料からの放射能汚染だとつきとめた。多くの人々を健康にしたことが評価され、小若氏は今年5月に開催された同連盟の総会で副会長に就任。「食品と暮らしの安全基金」との協力強化や、ウクライナと日本が放射能問題で、国際社会でイニシアチブを発揮するために連盟名が変えられた。  

IAEAや欧州の機関は「放射能汚染地域の住民の死亡率は全国平均の1・5から2倍」「障がいは17年後から増加」などの事実を認めたがらず、援助活動は毎年縮小しているそうだが、総会はウクライナ各局や国営メディア「ウクライナの声」で報道されたことから、日本のメディアとのちがいがうかがわれる。  

浅野さんは、原発による災害関連死を含め1600人以上が死亡した、福島第1原発のメルトダウンと爆発を「事件」とし、日本政府と報道を問題視。「不安を煽らない」という当時の政府の方針や、それに従い1号機の建屋が爆発で吹き飛ぶ映像を放送せず、メルトダウンについて2カ月後まで公表しなかったNHKをはじめメディアや、「(原発の)状況はコントロールされている」とウソをついて五輪を招致し、原発再稼働を進める安倍首相を鋭く批判している。  

「国際チェルノブイリ福島連盟」のマカレンコ会長は福島の原発事故をニュースで知り、「もう一つのチェルノブイリになる」と、日本大使館を通じて協力を申し出たが無視されたという。皮肉にも、3月15日のNHKのニュース番組ではチェルノブイリ事故と比べて深刻でないという趣旨の印象操作を行っていた。問題の解決には、国家を超えた連帯と正確な報道が欠かせないと強く認識させられた。

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