【福島から】原発事故を忘れさせるための 復興五輪に反対の声を 黒田 節子(原発いらない福島の女たち)

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収束しない放射能汚染 今も続く被ばくの現実

64年「東京五輪反対」プラカード 原発事故を経て理解

 今春のある日の東京新聞に、子どもたちがJヴィレッジでサッカーをしている写真が載っていた。子どもをダシにした「復興」キャンペーンは最も悪質だと感じていて、これを見て私は泣いた。友人に話したら、やっぱり泣いた…と彼女。  

楢葉町と広野町にまたがるサッカー施設「Jヴィレッジ」は4月20日、8年を経て全面営業再開した。ここが来年の東京五輪では聖火リレーの出発地となり、原発立地自治体として初めて一部の地域で避難指示が解除された大熊町も、聖火が通る見通しだ。事故が起きても除染すれば大丈夫、「復興」できると、何が何でも世界にアピールしたいらしい(Jヴィレッジ5月27日のHPには、ホテル棟正面玄関0・111μSv/hとあった)。  

私は高校野球を見ると、すぐジ~ンとくるタチである。64年の東京オリンピックの入場行進や女子バレーボールには感動したなァ。一方で、その「影」も垣間見た。テレビで目にしたのが、オリンピック反対のプラカードを持って歩いていた男性。表彰台で星条旗を見ず、うつ向いて拳をあげる黒人選手。「え~、なんで~?」といぶかる中学生の自分がそこにいた。  

その疑問が解け始めたのは、恥ずかしながらずっと後年。はっきりとオリンピック反対を怒りと悔しさを持って断言できたのは、3・11後、2020年の東京オリンピックに対してである。  

フクシマ原発事故で大気や海に放出された放射能は、広島原爆1000発分だという。しかもその多くの部分が、壊れた原子炉建屋などにまだある。倒壊しそうな排気筒があり、いつまた大地震があるかもしれず、そうでなくても雨風が吹けば流れている放射能。  

そんなフクシマが聖火リレーの出発地となるだって? 野球の開催だって? どんな権利があって世界の若人を被ばくさせるというのか。  

被ばく、住民生活の破壊に 反対し続ける

冗談じゃない。オリンピックにかけるお金は(それだって血税だ)、不安を口にできない被ばく者の家族に「避難の権利」を与えるために使いなさい。生涯にわたる健康チェックと、被ばく手帳を交付しなさい。被ばく労働者に公務員並の待遇を、避難できない人には安全な食料と定期的な保養プログラムを用意しなさい。  

今年の3・11アクションで、東京で反五輪の活動をしている有志と一緒に福島市内でアピールできたのは、ちょっとしたハイライトだった。郡山駅前で毎週行う金曜行動も同様だ。現地ではいろいろな厳しさにめげそうにもなるが、少人数だからこそ、声をあげ続けるのをやめるわけにはいかないのだ。  

私たちの生命を被ばくの危険にさらし、住民の生活を破壊・疲弊させ続けながら、オリンピックがダイジという国に対し、小出裕章さんのように皆で「非国民宣言」をするしかないだろう。  

半世紀前にTVで見たオリンピック反対の人のように、今度は私がプラカード持って「フクシマを忘れさせるためのオリンピック反対」を表明しようと思う。

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