途上国への武器輸出・治安・軍事訓練
フィリピン政府に武器輸出 治安警察の大量虐殺を支援
「民衆虐殺、学校爆破、女・子どもに対するレイプ、女性生殖器を狙撃するフィリピン警察に、イスラエル外務省および国防省は武器輸出許可を出すべきではない。人権侵害を止めるまで、フィリピンへの武器輸出を停止せよ」。イスラエル人左派の署名を掲げ、2018年11月、イスラエル人権専門弁護士マック氏は最高裁に訴えた。イスラエル外務省と国防省は「フィリピン警察の行為の責任は当局にない」と応じた。現在、テル・アビブ地方裁判所で裁判進行中だ。
フィリピンのロドリゴ・ドゥトルテ大統領は、土着少数派地区の学校を爆破したり、女性生殖器を標的に狙撃したり、レイプすることを同国の警察官に奨励している。彼は2016年6月の着任以降、フィリピン警察が「麻薬戦争」の名のもとに多くの国民を逮捕し、裁判で死刑判決を下し、約1万2千人を処刑した大量虐殺の責任者である。彼自身をヒットラーにたとえている。
ドゥトルテ当選後、イスラエルはフィリピンに大量の武器を輸出してきた。武器輸出詳細を公開しろとイスラエル人弁護士が求めても、当局は「軍事輸出詳細は国家機密だから公開できない」としていた。だが、フィリピンではこれらの詳細が報道された。
2018年、ドゥテルテ大統領はイスラエルを訪問。記者会見ではこう語った。「米国、ドイツ、中国は武器輸出制限があるが、イスラエルにはない。よって、私は武器の輸入はイスラエルからのみと部下に命じている」。
フィリピンはイスラエル製のタボール・ライフルやネゲブ機関銃を大量に輸入しているが、これらは市民相手に売るものではない。1987年フィリピンは民主主義国家となり、現地警察は軍人ではなく市民であるとフィリピン憲法に明記されている。イスラエル国防省および外務省は、フィリピン憲法違反となる武器を売り続けているのだ。
65年から86年にかけて、イスラエルはフィリピンの独裁者フェルディナンド・マルコスの政権を支援。イスラエル軍による戦闘・治安訓練を受けた治安部隊に、国民数千人が殺害され、数万人が逮捕され拷問を受けた。ドゥテルテ大統領は、マルコス独裁政権時代以上にイスラエルとの関係を深めている。
注釈:フェルディナンド・マルコス=1965年から86年までのフィリピン大統領。
タボール・ライフル=イスラエル政府運営会社(IMI)製造ライフル。セミ・オートから完全オートまで操作可能。 ネゲブ機関銃=IMI製造。
ビルマ政府の民族浄化 武器提供と軍事訓練で加担
「一般市民を虐殺したビルマ政府に武器を輸出するイスラエルは、共犯である。犯罪捜査しろ」―イスラエル人左派活動家が、最高裁に要求している。
2018年8月27日、国連特別捜査委員会は、「ビルマ(軍事政権による国名はミャンマー)の治安部隊は、少数派民族のイスラム教徒を虐殺、シン・カチンで戦争犯罪を犯した。ハーグまたはそれに等しい国際特別裁判機関で、ビルマ当局を起訴すべき」と報告した。
イスラエル左派活動家は、イスラエル司法長官に裁判を要求した。「ビルマにおける市民虐殺に関し、イスラエル国防相、武器輸出関連機関、在ビルマ・イスラエル大使館、大使、イスラエルの軍需会社や武器商人を刑事犯罪被告人として取り調べよ」
1948年にビルマが独立してから現在まで、ビルマ政府軍と治安警察は少数民族に対し、悪質な民族浄化を行ってきた。ロヒンギャでは大量虐殺があった。民族間の争いから発展した内戦で、村を焼き、略奪、集団懲罰、強制移動、レイプ、拷問、殺害、拉致、あらゆる悪質な犯罪が行われた。ビルマ政府は国民に基本的人権を認めず、政府軍は国民相手に犯罪を犯した。
ビルマの治安警察とビルマ政府軍が、人権侵害、人道的侵害および戦争犯罪を犯しているという証言は数多くある。90年代初頭からすでに米国とEUが武力介入を停止し、政府による犯罪は大規模な虐殺につながる可能性があると指摘したが、イスラエルの武器商人は、政府高官と国防省の承諾を得て武器を輸出。イスラエルはビルマ政府軍に戦闘訓練をも行っていた。今もイスラエルと中国は、ビルマに武器を輸出。EU、米国は黙認している。
注釈:ビルマ内戦= 1948年~2012年停戦合意
SIBAT、EFI=イスラエルの対外業界契約に関し、製品、システムなど幅広い分野において質疑応答サービスを行う政府機関。
南スーダンへの武器輸出に EU・国連が沈黙
米国は14年、南スーダンへの米兵送致を停止した。しかしEUは長年にわたり、南スーダンへの武器輸出禁止令を却下し続け、国連は17年、南スーダンへの武器搬入禁止令を却下する決議をだした。EU、国連は共犯だ。イスラエル人左派は署名運動で、南スーダンへの武器輸出の停止を求め裁判したが、エルサレム最高裁でも決着がつかず、テルアビブの裁判所に転送された。
それについてマック弁護士は、「政府が南スーダンやフィリピンへの武器輸出停止要求裁判を政治・経済の中心であるテル・アビブに移したのは、反武器輸出運動を真剣に受け止め始めた証拠だ」とコメントした。
イスラエル軍や警察による「訓練」で、市民が犠牲になった国は、ウクライナ、ウガンダ、セルビア、ボスニア、チリ、アルゼンチン、メキシコ、ブラジルなど。大量虐殺による、政治問題の解決が狙いだ。しかし国際社会は沈黙し続け、批判の声は弱い。黙っていれば、承認することになる。