国内のインターネット利用者は1億人を突破し、世論を形成する主要な媒体だと言える。2000年代に入ると、ネットでは被差別部落に対する偏見が煽られ、容易に拡散される、部落出身者へのヘイトが氾濫する時代となった。匿名かつ法整備が追いつかないネット上の差別は、現実社会の人権を浸食する。在特会などによるヘイトスピーチはその象徴的な事例だ。在特会は、ネットから現実に出て、街頭で差別煽動を叫んでいる。
水平社博物館前差別街宣事件では、在特会の川東大了らが1時間にわたる差別街宣をしたうえ、撮影動画をYouTubeで公開した。水平社博物館は、彼の行為に対し名誉毀損で訴え12年7月に勝訴したが、動画は裁判が終わるまでの1年半公開状態。その間、動画はアクセスが集中し、「水平社」や「部落」での検索上位となった。授業のなかで子どもたちが「水平社」と検索すると、トップに表示される状況に、学校や保護者から苦情がでた。
ネット上の差別の放置は、部落差別を助長するだけではない。部落出身者に「出自が明らかになれば、攻撃対象になりうる」という不安と緊張を強いる「二次被害」となる。差別動画の再生・拡散は、当事者を萎縮させるのに十分なのだ。
もはやネットは社会の一部だ。「たかがネット」と軽視せず、目の前の現実と向き合わねばならない。 (編集部・村上)