米国議員らが廃棄圧力
アイルランドの議員たちは、占領地西岸地区のイスラエル入植地の産品を輸入禁止とする法案を破棄せよと、企業ロビイストから圧力をかけられている。1967年戦争でイスラエルが占領した土地の不法入植地で生産されたものの輸入を禁止するという内容の「占領地法案」という法案で、すでに上・下両院が取り上げることを承認したものだ。
「占領地法案」を可決すれば米国から報復措置があるぞという恫喝的文書は、全議員宛に配布されている。恫喝文書は大企業のためにロビー活動を行うコンサルティング会社「ヨーロッパ・エコノミクス」と「オプティミティ・アドバイザー」の2社が起草したもので、議会内の調査業務部が委託を受けて配布した。調査業務部は議員用の「公平な資料」と主張している。
しかし、これは今年1月に親イスラエル派の10人の米国議員が「占領地法案」を成立させれば「重大な結果を招くぞ」という脅迫文書をアイルランド政府に送ったものと、全く同じ内容であった。
ロビイストの文書は、「占領地法案」は「アイルランドとイスラエルで操業している米企業の営業を妨害」し、法制化すれば「米国がアイルランドに制裁を課し、アイルランド経済が大打撃を受けることになる」と警告している。
恫喝に屈しない 議員たちの抵抗
一方、パレスチナ人に連帯するダブリンのグループ「サダカ」は、議員たちに親イスラエル派議員やコンサルタント会社の恫喝を拒否せよと呼びかけている。「サダカ」の代表ゲリー・リストンは、立法化すれば米国企業がアイルランドへの投資を引き揚げるというのは「馬鹿げた主張」と一蹴している。アイルランドの大政党の一つ「フィアナ・ファイル」も恫喝文書を非難。
同党スポークスパーソンのナイル・コリンズは、投資引き揚げはあり得ないとし、「自分は占領地法案に賛成しているが、それに関して米企業からの働きかけも陳情もない」と語っている。「議員をやっているといろんな問題でロビイストから働きかけがあるものだが、この問題では、GoogleもFacebookもその他の企業も私に何も言ってこない」。
ボイコット運動の世界的波及へ
議員の大半は法案を支持しているが、アイルランド政府は反対している。レオ・バラッカー首相は、1月30日の米国議員10人の書簡に対し、自分は「法律的理由と政治的理由の両方から法案に反対である」と返事を出した。
政府の論理は、貿易問題はEU全体で考えるべきことで、アイルランド一国が勝手に輸入禁止や制限などする権限はない、というもの。ゲリー・リストンは、法案とEUの法とは相反しないという専門家の見解を引用して、政府に反論している。
恫喝文書をよく読むと、彼らが一番恐れているのは「ドミノ効果」であることが読み取れる。南アフリカの少数白人支配を終わらせたのは、ボイコット運動の「ドミノ効果」で世界世論と世界運動が形成されたためである。姑息な妨害で歴史的流れを止めることはできないことは、歴史が証明しているのだ。