連載:反戦をアートで表現する人々(3)(聞き手・編集部 村上)
1952年4月28日「日米安保条約」・「日米地位協定」の発効により、沖縄が日本から切り捨てられた。これに対し、4月28日は「沖縄デー」として集会やデモが行われている。今年の4月28日は、「さまざまなジャンルのミュージシャンと観客が、対等平等の関係で集まって作り出すコンサート」と銘打ち、ヨンニッパ音楽祭~基地も安保もいりまへん…原発も!~(主催「ヨンニッパ音楽祭」実行委員会・大正会館)が行われた。そのなかで、沖縄民謡をテーマに演奏したバンド「天真爛漫☆」の健吉さん・いずみさんに、沖縄への思いを聞いた。
沖縄民謡に乗せる 平和への思い
(1)反戦がテーマの集会で歌い始めたきっかけ
健吉:大学時代から路上や集会、居酒屋「風まかせ」で歌ってました。戦争や差別に反対するのは普通のことやと思ってたんで、恋愛の歌と同列で歌いました。
(2)歌で反戦を伝える意義
いずみ:音楽は人の心を開くものだと思っています。理論より受け止めやすいんじゃないかな。聞いた人には自分のこととして受け止め、考えてほしい。時間がかかってもいいから、私らがまいた種が聞いた人のなかで形になれば嬉しい。
沖縄民謡を演奏すると「癒される」と言われます。ゆったりと耳を傾けながらも、戦争の悲惨さを歌っている曲もあることに気づいてほしい。
(3)沖縄民謡の演奏で大切にしていること
いずみ:リスペクトをこめて、沖縄民謡の節回しをちゃんと覚え、正しい言葉で歌いたい。2人とも大阪出身で言葉を奪った側として育ったので、その責任としてウチナーグチを継承したい。いい加減な発音をしたら、また言葉を奪うことになる。
(4)沖縄のエピソード
いずみ:三線を始めた頃、師匠に「昔、三線っていくらだったんですか」って聞いたら「15ドル」って答えられて、アメリカに占領されていた過去を実感しました。
健吉:僕は大学生だった1987年、沖縄に行きました。島の人たちが隠れていた壕を見て、日本軍に殺されたり、手榴弾を渡され自決させられたり、親が子どもを殺した歴史を学びました。
(5)ヨンニッパに参加して
いずみ:「平和について考えている人がたくさんいる」とうれしかった。反戦の思いを共有しながら会場の雰囲気を楽しみたいです。
健吉:初めてのヨンニッパです。楽しみながら勉強したり、いろんなことを感じ取りたいな。
(6)今後の目標
] いずみ:伝統的な沖縄民謡を極めながら、オリジナルにも挑戦したい。ウチナーグチで歌詞を書いてみたい。
(7)音楽で平和を訴えたい人へのメッセージ
健吉:僕らが自由に音楽ができるのは平和だから。若い人たちも自分の想いを歌に乗せることを恐れずに思いっきりやってみたらいいと思います。
ビューを終えて―ヤマトンチュの 立場を忘れない
作詞作曲・杉本健吉さんの「わすれもの」は沖縄戦を歌っている。歌詞の「つぐないようもない きずあとを おもえば いま いきる いのちを みすえながら いきよう」の部分にヤマトンチュとしての立場性が表れている。
辺野古の新基地建設が強行されるなど、安倍政権は戦争へと突き進んでいる。これに対する闘いの場では、沖縄の民謡がよく歌われている。しかし、そこに「言葉を奪った側」という視点はない。
ヨンニッパ音楽祭の口上にある「『沖縄の闘いは凄い』などと、ヤマトンチュが万歳三唱することは断じて許されない。民主主義は己の闘いの結実として実体化するのであって、連帯や共闘の名を借りた他人の成果の横取りではない」を戒めとして、日本本土の政権打倒に総力を挙げて闘いたい。 (編集部・村上)