公明党叩きを期待する市民感覚が維新へ
大阪の統一地方選で維新が大勝したが、市民派として活動してきた戸田ひさよし市議は、惜しくも落選。市議会は、維新公認市長のもと、維新・公明・自民で議席の85%という圧倒的多数となった。戸田氏に選挙戦を振り返ってもらった。 (編集部・山田)
反創価学会票が 維新へ
戸田:創価学会の牙城である門真・守口市では、反比例して反公明党感情も強く、公明党を叩いた大阪維新に痛快感を持ったんだと思う。私は、2002年以降の市町村合併反対闘争の間、「合併で議会が公明党に牛耳られる」と、反公明党宣伝に力を入れたので、2003年の市議選ではトップ当選を果たした。
「反公明の旗手」のイメージで当選を重ねてきたが、今回の選挙では、「最も害悪が大きい維新グループ」への批判を中心テーマにしたため、公明党叩きを期待する市民感覚と大きなズレを生じたようだ。落選後に自民党古参議員から、「公明党叩かんかったから戸田票が逃げたんや」との指摘を受けて初めて気がついた。
門真市議会は、定数20のうち、維新の宮本市長支持派である「大阪維新の会緑風議員団」6人+公明7人に自民4人を加えると、17議席という圧倒的多数になった。
――現状に不満をもっている人が、維新をふわっと支持するとの分析は?
戸田:リベラル派の支持者が維新と共通する部分も確かにある。しかし橋下が「出馬は2万%ない」と言ったのに、ぬけぬけと府知事選(2008年)に立候補したのは周知の事実。嘘つき政治家を許容する人が増えたと思う。
でも、大阪のどこがよくなったのか? 維新政治で儲けている連中はいるが、雰囲気で騙され、幻想に投票しているんだと思う。維新に投票する心理はナチスと同じ。既存の権力をやっつけて、改革してくれるとの幻想だ。
大阪維新が首長をおさえて10年たって、利権を掌握し、官邸とのパイプも太く、戦争法にも賛成した。吉本興業と契約を結んで、大阪宣伝隊の仕事を発注し、芸能人やメディア人がテレビやツイッターで支えている。
鉄の選挙 利権軍団=維新
――地域政党として、大阪人の地域感情をうまくとらえている?
戸田:そうとも言えるが、その「大阪人の地域感情」なるものは、かなり歪んだ不健全なものじゃないかな。維新は、実際には大阪らしい文化を潰している。小泉・安倍政権の新自由主義改革のもとで、人々の規範意識が崩れている。維新は「本音」と称して、デタラメなことを言うだけ。選挙で人を騙して票を集めるノウハウを徹底して高めたのが維新だ。
確信犯的にウソのビラをまき、目新しいテーマで耳目を引き、熱として伝わっていく。例えば、門真市は2005年に市長退職金=ゼロを既に導入し、報酬25%カットも制度化されていた。それなのに、維新の宮本候補は16年市長選挙で「退職金をゼロに! 報酬20%カット! これが身を切る改革だ!」と、ヌケヌケと叫び立てて当選し、そのデタラメをいくら追及されても平気の平左で、当選後には前市長より報酬アップさせる始末だ。
維新の若い運動員は、頑張れば議員や議員秘書に取り立ててもらえるという出世コースが用意されている。集票構造もしっかりしていて、電話かけや集会動員に厳しいノルマを課して票を集め、「鉄の軍団」ともいわれる利益共同体だ。
幼児教育無償化は維新の目玉政策だが、公立幼保育園を民営化し、行政が保育料を上限はあるがほぼ全額支払ってくれるんだから、経営安定化を保証する制度であり、維新の票田となっている。要するに新手の利益誘導型政治だよね。
維新打破のポイントは、「足元の維新の議員たちの実態を調査して批判していく」ことだと、私は言い続けて実践してきたが、まだまだ不足だった。今後さらにそれを強化していく。