男性特権も含む 複合的な差別構造に抗う
統一地方選に「日本第一党」が出馬、選挙演説という形でヘイトスピーチを行うことを目論んだ。2019年4月3日と4日、京都市内のカウンター行動では、覆面で顔を隠し、黒衣をまとい、無言で横断幕を掲げる「黒衣のフェミニストたち」が出現した。以下、呼びかけた人たちに聞いた。 (編集部・吉田)
──なぜこのようなスタイルの運動を行ったのですか。
黒衣‥私たちは組織ではないので、全員の考えではないことをお断りしておきます。
黒い服を着て、無言で横断幕を掲げるスタイルは、エルサレムのウーメン・イン・ブラックから学びました。対立する者どうしが罵声を浴びせ合う場では、攻撃的になり易く、暴力的な男性文化も持ち込まれがちです。今回はそうではない形で運動を作ろうとしました。沖縄高江の基地反対闘争では「私たちは非暴力です コトバの暴力を含め誰もキズつけたくありません」と看板に書かれています。マッチョでない方法で場を作ろうとする時、世界各地で非暴力主義が選択されてきました。また、覆面で自らを無名化し背後にいる人たちを可視化するサパティスタ民族解放軍の闘争からもヒントを得ています。
暴力を全否定する訳ではありません。全ての人間関係は暴力的なものです。だからこそ私たちは、日常生活でも闘いの現場でも、人を侮蔑したり支配しようとしたり、傷付けて開き直ったりしないよう、意図的で作為的な努力が必要なのです。
これは今初めて出た議論ではありません。もし私たちの行動があなたに新しく見えるとすれば、これまであなたが何を無視してきたのかを考え直す機会にしてほしいです。
無言でバナーを 掲げる手法
──対峙してみて、どうでしたか?
黒衣‥私たちは無言でバナーを掲げていただけでしたが、第一党は街宣を早々に切り上げ、私たちの悪口しか言わなくなり、結果としてヘイトスピーチが減りました。罵声をあびせるよりも断然効果がありました。
今回は第一党への抗議を行いましたが、桜井たちを悪魔化して自分たちと切り離し、カウンターをすればそれでいいわけではありません。差別政策を推進する自民や維新にも、本当は抗議が必要です。マイノリティに対する差別的な構造を実際に作ってきた日本社会や、それに加担してきた自分自身の在り方を、一人ひとりが問い、変えることが大切です。私たちはヘイトスピーチだけでなく、男性特権も含む複合的な差別構造に反対しています。
従来のマッチョな行動には参加できなかった人々から、初めてカウンターに参加できたという声がありました。私たちの行動を参考に、自分自身のカウンターを創造しようという人々がいれば、連絡をいただければ、反省点も含めシェアしたいと思います。
連絡先はTwitterアカウント @FeministInBlack