意見特集(4)メディアの視点から異論を排除する天皇交代・改元報道
エイプリルフールに安倍晋三首相が新元号発表で記者発表、メーデーに新天皇即位儀式が行われた。安倍官邸と電通・博報堂の共謀で、改元によって「新しい時代が始まる」という「神話」に基づくデマが拡散されている。日本国憲法が禁じる天皇の政治利用、政教分離に違反した神道儀式が11月まで続くが、日本のキシャクラブメディアも、天皇制の強化に自ら協力し、人権と民主主義を蹂躙する権力の共犯者となっている。
安倍首相は4月30日の退位礼正殿の儀で「国民代表の辞」を読み上たが、「天皇皇后両陛下には、末永くお健やかであらせられますことを願っていません」と述べた。私はテレビ中継を視聴していたので、「願っていません」と言ったのに驚いた。
天皇夫妻の健康を願って「已ません」を「己ません」と読み間違えたようだ。キシャクラブメディアは、首相の読み違いを一字も報道していない。
また、明仁の退位・徳仁の即位が、国家神道に則って行われている。徳仁は一般参賀(5月4日)において、国民に向けた「お言葉」の冒頭で、「剣璽等承継の儀、及び即位後朝見の儀を終えて、今日このように皆さんからお祝いいただくことをうれしく思い、深く感謝いたします」と述べた。「剣璽等承継の儀」は皇位継承者が継承の証として剣と璽(印章の一種)などを受け継ぎ、新天皇となる儀式で、国事行為として行うのは違憲だ。4月30日の明仁天皇の退位の際にも、剣と璽などが置かれた。しかし、テレビ各局はこの神道儀式を無批判に中継した。
天皇制・天皇夫妻の賛美一色
NHKは一連の退位の儀式に関して、「皇室の祖先の『天照大神』がまつられる伊勢神宮の内宮」(4月18日)と報道。4月30日の皇居「賢所」の天皇を伝えた際も、「皇室の祖先『天照大神』がまつられている」と報じた。公共放送が神話を史実と捏造して伝えている。
5月1日午前零時、 NHKラジオのアナウンサーは時報の後、「令和元年5月1日午前零時のニュースをお伝えします」と伝えた。テレビ各局はそれまでの明仁夫妻礼賛の番組を新天皇夫妻の賛美に切り替えた。
1日午前10時半からの即位式がテレビ中継され、天皇夫妻の学友、タレントなどが祝意を述べた。NHKはテレビで、徳仁の同級生の「陛下は悪いことをしたことがない」という発言を取り上げ、テレビ朝日は英国留学時代に警備した英国警察官にまで取材した。
また、各番組は夫妻の結婚についても取り上げ、馴れ初めは1986年のスペイン王女歓迎レセプションだと伝えたが、実際は2人の結婚は宮内庁・外務省人事だ。徳仁は何十回も見合いを重ねたが結婚相手が決まらず、5年前に求婚を断られた雅子氏に再アタックした。
1992年4月、枝村純郎インドネシア大使は日本人駐在記者との懇談で、「皇太子が小和田恆君(当時、外務省審議官)の娘しかない、と言っている。小和田君は娘を差し出すしかないようだ」と話している。つまり、宮内庁の意向を受けた当時の外務事務次官らが小和田家を説得した政略結婚なのだ。結婚式の日、雅子氏の母親は、日本テレビ記者に「(雅子氏との)お別れの時に何と言われましたか」と聞かれ、「御国のために尽くしなさい」と言ったと答えた。結婚を巡っては、キシャクラブメディアが宮内庁と「取材しても報道しない」という協定を結んだことも忘れてはならない。
権力監視をしないテレビと新聞
報道各社の世論調査で天皇制反対は4~8%、元号より西暦を使う人は半数以上だが、天皇制・元号に異議を唱える人々の声は全く伝えられていない。
天皇制の廃止を求め、元号を絶対に使わない私は、5月1日、「終わりにしよう天皇制!反天WEEK(4・27~5・1)」の「5/1:新天皇いらない 集会&銀座デモ(東京・新橋・約500人)」に参加したが、集会・デモを報道したテレビ局はない。2日の東京新聞、朝日新聞もベタ記事だ。
5月3日の朝日新聞は社会面で〈改元の「祭り」テレビ染めた 天皇制 議論深まらず〉などの見出しで、〈改元一色に染まった〉と論じた。記事の最初に、藤森研・専修大学教授(元朝日新聞記者)の〈「全体的に軽かった」〉〈今回の「軽さ」を「重苦しい代替わりよりは望ましい。30年前にあった同調圧力が減じたという意味では前進だったと前向きに評価する」〉という見解を載せた。
また、象徴天皇をめぐる「人々の意識の変化」を指摘し、「(元号や世襲について)議論があまりみられなかったのは残念」と発言している。しかし、安倍政権がメディアを広報機関として大政翼賛報道を行うことへの危機感は全く感じられない。ノー天気過ぎる。
メディアは、裕仁・昭和天皇の死を「崩御」と報じた時に瀕死の状態に陥ったが、今回の「崩御なき天皇譲位」(フジテレビなど)を巡る5週間の報道で完全に死んだ。