アフリカ南部を襲った気象災害 千人を超す死者
グリーン・ニュー・ディール
地球温暖化、世界金融危機、石油資源枯渇に対する一連の政策提言で、内容は、金融と租税の再構築、および再生可能エネルギー資源に対する積極的な財政出動を提言している。
2019年3月20日、サイクロン「アイダイ」がモザンビークなどアフリカ南部を襲い、ダム崩壊、家屋や橋が押し流され、道路の寸断、空港麻痺を引き起こし、人口50万人のベイラ市の90%を破壊した。
引き去らない汚水の中に死体が放置され、コレラなど伝染病の発生が懸念されている。死者数は1000人だが、増える予想だ。数千人が避難所もなく、「人々は小学校や官庁に避難し、食料、水、薬品が不足している」と、ニューヨーク・タイムズが伝えている。
衛星画像では、幅50キロメートルにもなる内海が散在していることが確認されている。また、モザンビークの西方にあるジンバブエとマラウイでは、死者100名以上、行方不明者数百人、物的被害も甚大である。気象科学者のエリック・ホルトハウスは、モザンビーク洪水を「気象変動の影響」と主張する。
「大気が暖かくて大量の水蒸気を含んでいたため大降雨となり、地域によっては、1年分の雨が数日間で降った。気象変動による干ばつが続き、土壌が固まって、雨水を吸い込まなくなっていたところに、大量の水がどっと流れた。海面が一世紀前より31㎝上昇していて、沿岸洪水が内陸部にまで達した」。
米国での攻防
米国でも同様だ。ミシシッピ川やミズーリ川に大量の雨水が流入し、各地で水浸しになり、多くの町や農場が被災した。一般に、河川氾濫による洪水が引くのには約28日かかるが、崩壊した建物の修復には数年かかる。被災者は数万人に達し、ホームレスになった者も多い。
「気候変動危機は先のことでなく、今あるのだ」と、オマハ近隣の空軍基地で洪水防災を担当するチャールズ・ピースが書いている。
「気候変動危機を認識する政府官庁の一つが軍部だ。ペンタゴンは、気候変動による異常気象を国家安全保障の脅威だと見ている」。にもかかわらず、政治家は温暖化や気候変動を否定する。ネブラスカやミズーリで家や生活を失った住民が気候難民の大群に加わり、今後も増えていく。
共和党政治家や一部民主党政治家は、グリーン・ニュー・ディール法案潰しに躍起だ。『フォックス・ニュース』は、法案の可決で「マイカー廃止、牛飼育廃止、ついには子どもも汚染源として禁止されるぞ」と伝えている。
民主党のディック・ダービンは、「温暖化は命にかかわる危険ではない」と片づけている。下院議長のナンシー・ペロシは、法案を投票にかけるのを渋っている。
エネルギー産業や建設産業の労働組合指導者も、グリーン・ニュー・ディールによる雇用創出には懐疑的だ。統一鉱山労働者組合のフィル・スミスは、「『正しい移行』という言葉は前にも聞かされた(訳注:エネルギー源の石炭から石油への移行)。組合員が食べていけるかどうかが心配なのだ」と言う。
彼はグリーン・ニュー・ディールを正しく理解していない。農場や畑が水浸しになれば、それこそ「食べていけなくなる」のだから。
「グリーン・ニュー・ディール」は、被害を抑えるためにどうするべきか議員たちに考えさせる目的の、拘束力のない法案だ。時間がないことは、各地の洪水を見ても明らかだ。
各種世論調査によれば、米国民の70%が気候変動を認め、共和党員の3分の2が共和党の現状認識が間違っていると思っている。「サンライズ運動」の活動家たちは、法案を持って各議員を回るだけでなく、保守州といわれる州を回る説明キャンペーンを計画している。