1954年、造船疑獄といわれる贈収賄事件があった。1月に捜査開始、政界・財界・官僚の多数が逮捕され、吉田茂内閣が倒れる発端となった▼60年以上経た今、森友疑獄に加計疑獄である。首相が収賄と便宜提供の当事者であることが白日の下に曝された。安倍をかばうため、公文書を隠蔽・偽造した。基本的な統計も改ざんし、賃金上昇と景気拡大を演出する。安倍政府と官僚の悪事は、造船疑獄よりはるかに悪質で規模も大きいが、捜査すらなされない▼「代替わり」の諸行事とそれに続くオリンピック騒ぎでこの現実を塗り隠してゆく。賃金は下がり、原発は再稼働されてゆく。東洋の島国日本は、国際資本に国家と国民を捧げ、核汚染にさらされ、人々は困窮してゆく。この現実は悲惨である▼しかし、経済を第一とするのではなく人を第一とし、別の生きる道を模索する人々の生活と運動が裾野を拡げている。人の輝きを奪い尊厳を踏みにじることへの怒りが人々を動かし、世を下から動かしてゆく。そういう時代が始まっている。アベ政治を終わらせるまでの途には多くの困難がある。だが、明けぬ夜はない。日本近代はいま、分水嶺にある。 (n)