大地を守ることは抵抗闘争である
1976年3月30日、被占領地パレスチナのガリラヤ地方で、イスラエルの土地収奪に抗議するゼネストが呼びかけられた。これに対してイスラエルの軍、警察が3つの村を襲撃し、パレスチナ人6人が殺され、69人が負傷し、260人が拘束された。「土地の日」と呼ばれる残虐行為である。オリーブの会は3月30日、「土地の日」連帯企画として、「大地を守ることは抵抗闘争である(於・クロスパル高槻)」を開催。(2)宮澤由彦さん(セーブ・ザ・オリーブ・プロジェクト運営責任者)の講演「いまパレスチナの土地を守るために、『食糧主権』を訴える必要性とは」と、パレスチナ料理を囲む交流会が行われた。宮澤さんの講演を要約する。(編集部)
セーブ・ザ・オリーブは、パレスチナの土地を守るために食糧主権を訴えています。その背景となる世界情勢としては、(1)保守と新自由主義の結合の加速、(2)軍事的解決の選択肢の高まり、(3)IT革命によるグローバル化の加速、が挙げられます。
パレスチナの問題点は、(1)ネタニヤフ政権の長期化、(2)加速する土地の没収と入植地建設、(3)分離壁の固定化と締め付けによるイスラエルへの隷属化、です。パレスチナ農民には支援が必要です。パレスチナ自治政府による農業支援は、圧倒的に不足し、新自由主義政策の押し付けが進んでいます。
UAWC(パレスチナ農業労働委員会同盟)は、農業支援を訴えています。
世界的にみても「食糧主権」意識が浸透しつつあります。背景には、新自由主義的な農業政策の進展により、飢餓、土地を追われる農民、生態系の荒廃、伝統的知恵や技術の断絶の加速への危機感があります。
食糧主権とは、国と民衆が自分たち自身の食糧・農業政策を決定する権利で、1996年にビア・カンペシーナ(土地なし農民運動)により提唱されました。パレスチナの食糧主権を実現するために、意義を国際的に周知させることが重要です。UAWCのビア・カンペシーナ加盟と、食糧主権の問題に焦点があたってきたいま、イスラエルによる土地没収がパレスチナの食糧主権にとって脅威です。
最先端農業を誇るイスラエルに対抗するには、パレスチナの伝統農業を守ることが有用です。イスラエルの節水農業技術や品種改良、IT活用に対して、パレスチナは素朴な自然依存型の天然農業です。しかし、イスラエルのせいで変化しつつあります。UAWCでは貯水槽作りを行ってきましたが、イスラエル軍が溜池を破壊しています。「新自由主義的農業政策・技術VS伝統的・生態系共存型の農業」の対決構図です。
パレスチナの土地は、いま何もなくても将来は使える耕作予定地です。農業には、農地だけでなく生態系が必要です。自然や土地や共同体が残されてこそ、持続可能な農業が成り立つのです。
民間がやるべきことは、(1)政府の行う支援策への監視とアドボカシー(弱者を擁護し代弁すること)、(2)商品・サービスの購入による連帯経済の構築、です。民間は金を使っての技術協力、設備給与はできませんが、イスラエルボイコット運動をはじめとする消費行動で支援できるのです。