放射能の影響は風評被害か
原発事故が起きて8年が経った。しかし、今も福島県の4万人以上が避難生活を余儀なくされている。事故は全く収束せず、崩壊した原子炉は今も大気に放射能を出し続け、放射能汚染水が溜まり続けている。
ところが政府は、財政的支援を打ち切ることにより20ミリシーベルト以下の放射能汚染地域への帰還を事実上、避難者に強制している。さらに政府は、「福島原発事故による放射能の影響を主張することは『風評被害』を煽り、福島に対する差別を助長する」と宣伝している。
関東地方でも被ばくによる健康被害
私は「ゴーウェスト3・3集会」(大阪・国労会館)に参加した。福島県や関東地方から西日本に避難した5人が、避難の経緯や現在の状況を話された。5人の話に共通するのは、自身が事故後、「原爆ぶらぶら病」(故・肥田舜太郎氏が唱える、被爆者の無気力・疲労感などの症状)などに悩まされていたが、西日本に引っ越して体調が回復したこと、また、福島県や関東地方で暮らしていた家族や友人には、若いのにがんなどを発症して亡くなった人が多いことである。
当日配布された渡辺悦司さん(市民と科学者の内部被ばく研究会)の資料によると、関東地方における白血病や悪性リンパ腫など血液がん患者の増加は著しい。たとえば2016年の東京での血液がんの合計は2010年比35・4%増で、全国血液がん合計の26・9%増を大きく上回っている。(政府の「院内がん登録」統計)。このように、資料は5人の体験を裏付けている。関東でも被ばくの影響は「風評被害」ではない。
小児甲状腺がん急増は被ばくの影響
福島県健康県民調査によると、現在福島県では小児甲状腺がん、あるいはがんの疑いは、209人に及んでいる。チェルノブイリ原発事故後も、小児甲状腺がんが急増し、国際機関とウクライナやロシア政府は、事故とがん多発の関連を認めた。ところが福島県は2016年、「(他地域の)有病数に比べて数十倍のオーダーで多い」ことを認めながら、原因については「放射線の影響とは考えにくい」とする。政府もまた事故後、明らかに多発している小児甲状腺がんと放射線被ばくとの関連さえ認めようとしないのである。そして、福島県健康県民調査検討委員会は調査の縮小に舵を切ろうとしている。むしろ、関東地方を含めて調査を拡大すべきである。
放射線被ばくによる発病・発症は、決して「風評被害」ではない。被ばくと病気・症状の関連を調査するとともに、東日本から西日本に円滑に移住できるよう、公営住宅の提供などの施策を求めたい。
原発廃絶をめざそう
3・3集会における避難者の発言の中で、「パラレル・ワールド」という言葉が印象に残った。事故後の深刻な影響に悩む人々と、事故前と変わらない日常生活を送っている人がパラレル(平行)な世界で暮らしているというのである。放射能汚染を「風評被害」として避難者の帰還を強制する政府が、このような「パラレル・ワールド」を作り出している。私は前者の立場にたって、避難者に対する支援政策の強化を求めるとともに、ひとたび事故を起こすと深刻な影響もたらす原発廃絶をめざしたい。