【ベネズエラ】ベネズエラ危機とリアルポリティーク アルフレッド・デ・ザイヤス(ハバナ出身の米国人人権派弁護士・歴史家)出典:MRオンライン、2019・3・2 翻訳 脇浜義明

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 ベネズエラ危機は覇権大国米国政府が意図的に作り出したものだが、ベネズエラ政府にも責任の一端がある。農民たちにディケンズやゾラやヘミングウェイを読んで聞かせたチャベスがマドゥロに残したベネズエラはそんな牧歌的な国ではなかった。  

豊かな頃のベネズエラは、ちょうど第一次大戦後のヨーロッパに過渡期的に実現した偽の階級的均衡と同じだ。資本家階級と労働者階級が表面的調和を保っていたが、疎外されていた中産階級やプレカリアートからファシズム・イデオロギーが生まれ、資本家階級の支援を得て政権を取った歴史が思い起こされる。国際連帯として、ベネズエラの矛盾とチャベスタの失政を指摘する。  (編集部 脇浜)

原油頼みの無策が招いた破綻

 チャベスとマドゥロは、国民の安寧と発展を委任された指導者として、ベネズエラの経済的危機に対して全面的責任があることは否定できない。  

原油輸出に全面依存する旧政権の経済政策を継承し、収益を平等分配するだけで、経済の多様化や食糧安全保障を実現するために、生産と供給の自立への道を進むことができなかった。  

これは大失政だ、と指摘せざるを得ない。国際法や自由貿易協定に安易に依存し過ぎた。チリ、ニカラグア、イラクに米国が仕掛けた経済戦争を見れば、天然資源輸出依存経済がいかに脆いかは、容易に見えていたはずだ。  

理想を持つことは大切だが、政治的指導者はリアルポリティークを無視して唯我論に陥ってはならない。  

米国に挑戦するなら、米国の反撃を予測して、充分に備えるべきであった。経済封鎖に備えた各種の計画を用意すべきであった。国際法や貿易協定などに頼らず、米国や反動勢力による国際法や協定違反の対応策を講じるべきであった。  

チャベスとマドゥロの責任はその点にあるが、彼らのナイーブな善意が悪い、というのも奇妙な論理であろう。  

薬品や食糧を買い溜めし、闇市で高い値段で売って大儲けする悪徳商人、通貨を操って通貨危機を作り出す金融機関、政府補助金で賄われる食糧や薬品を隣国コロンビアやブラジルへ密売する闇商人、米国やその同盟国の経済封鎖など、挙げればきりがないほど犯罪者がいる。  

諸外国が作った 「人道的危機」

チャベスとマドゥロの弱点を突いて、米国、カナダ、EU(ベネズエラ所有の金や有価証券を抑えるなどの強盗行為を行っている)、南米反動諸国、ベネズエラの野党が、ベネズエラ国民の苦境を作り出し、チャベス政権が作り出した「人道的危機」と宣伝しているのだ。  

しかし、「ベネズエラに人道危機はない」とメディアに問われて答えられないようでは、問題解決にならない。経済危機の解決のためには関係者すべての善意が必要だが、それは期待できないだろう。  

一方で、政府は国民全体に対して責任を持つ以上、何らかの解決策を見つけなければならない。ある程度の妥協も必要である。財界を経済活性化に協力させる施策も必要だろう。しかし、物資隠匿、密売、破壊工作などの不正行為に対しては、厳しい態度をとるべきだ。  

国際社会の良心的部分に働きかけ、経済戦争や理不尽な制裁が解除され、少なくともベネズエラの原油、金、ボーキサイトなどが輸出でき、食糧や薬品などを輸入できる状態を、とりあえずは実現しなければならない。  

粘り強く闘うしか道はない。武器になるのは、真実と、そしてある程度リアルポリティークに即した妥協や駆け引きであろう。

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