大阪維新ダブル選挙
3月8日、大阪府の松井一郎知事と大阪市の吉村洋文市長が、知事選・市長選のクロス選挙出馬を表明した。都構想に向けた住民投票への協力を、公明党に断られたことが背景だと考えられている。その影響が大阪市のベッドタウンであり、約35万の人口を抱える高槻市にも見られる。
本紙で時評短評を担当する高木りゅうた議員に、維新の党利党略により翻弄される地方政治について訪ねた。 (文責:谷町邦子)
公明党への圧力のために 自党の議員すら駒扱い
去年の夏から高槻市の市長選に元衆議院議員の松浪健太氏(大阪10区:高槻、島本)が出馬するという話がありました。今年の1月頃には、濱田剛史(高槻市・市長)の陣営が松浪氏が市長選に出るのは確実だと濱田氏のポスターを貼り出していたんですよ。ところが3月5日に突然、松浪さんが府議会選に出ると会見しました。
私は都構想を巡るやりとりの中で、松浪氏は府議会出馬が決まったと見ています。府議会には高槻市、三島郡の選挙区から6人が立候補予定なのですが、維新からは松浪氏の他に、現職の池下卓氏の2人が出馬する予定です。松浪氏は知名度があるので、池下氏が落選するおそれも。リスクを冒してでも、同じ選挙区で公明党の林啓二氏にプレッシャーをかける狙いがあるように思えます。また、高槻での維新への注目を高めるために、松浪氏を擁立したとも考えられます。
トップダウンで現場無視
高槻の維新が「おおさか維新の会」に公認を得たのは2015年。その年の市議会議員選挙で、立候補者の全員3人が当選。同年の大阪府議会選挙における高槻市、三島郡の選挙区では、池下氏が2位の自民党、吉田利幸氏に大きく差を付けて当選しました。「維新フィーバー」と呼ばれる状況が高槻にも生じていたのです。
しかし、今では維新の勢いはかつてほどありません。トップダウンの党運営に不満を感じ、党を離れる議員もいます。また、自分が会期中でも全国の維新の選挙協力にかり出されることもあり、余裕が無く、地元住民の陳情を断る事態にまで陥ったと聞きました。
都構想の試金石 高槻市と島本町
高槻市と隣の三島郡島本町とを合併するという議題は出たことはありましたが、2つの自治体の間に二重行政はなく、必要性を感じる人も少なく、立ち消えになっていました。
しかし、2017年の島本町長選挙の際、維新公認の立候補者が島本と高槻の合併をぶち上げたんです。結局、島本町の人たちが合併は嫌だと、差を付けて合併反対の町長候補を当選させました。しかし、今回の選挙でも維新の市会議員も松浪氏も高槻と島本の合併を主張しています。
都構想が膠着状態なので、高槻市と三島郡島本町の合併という実績を作りたいという狙いがあると考えられます。 * * * 住民の生活の実態や、現場で働く議員を無視して行われる維新の党利党略。この政党に、多様な人々が生活する大阪の舵取りが任せられるとは思えない。