春先はどこか不穏だ。暖かい空気と冷たい空気が交差し、身体も緩んだかと思ったら、こわばる。冬は時間が止まっている感じだったのが、気づけば地面からは草花が萌え出で、鳥たちがさえずり、生き物たちがうごめいていく。もちろん、春はうれしくもあるのだが、どこか不穏にも感じる▼この時期は、新年度が始まって生活に変化が生じる人も多いが、逆に、たとえばひきこもっている人などにとっては、自分が置いていかれるようでざわつく季節でもある。何かが動くというのは、安定が崩れるということでもあって、新しいことには、常に不穏さがついてまわるものなのだろう▼人と人との関係もまたしかりで、安定している時期もあれば、変化する時期もある。そのとき、変化を受けいれずに安定を求めようとすると、関係がこわばっていってしまう。逆に、変化の不穏さを受けいれて、流れるがままにまかせていくと、そこには新しい風も入ってくる。そのときはマイナスに見えたことが、時間が経つと必要な変化だったとわかることもある。季節がめぐるように、何かが変化して、それがまためぐってくる。だから、春は不穏だけれども、それを愛でたい。 (K)