「闇に消される」3・11事故の健康被害者・避難希望者に光を 「ゴーウエスト」下澤陽子(2014年、東京→神戸へ家族避難)

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私は、原発事故後に東京で娘の体調が非常に悪化し、医師に「被ばく影響が疑われる」ということで転地を勧められて、神戸へ避難しました。娘の体調は回復し、避難者活動へ参加しました。

福島だけでなく、関東・首都圏も広範囲に放射能汚染されています。集会やデモとともに、昨年から避難希望者の支援も始めました。国も地方自治体も、避難者への住宅支援などを打ち切るだけでなく、避難を希望する人への支援も一切しません。その棄民政策の結果、健康被害者も避難希望者も絶望的な状況です。

まず避難移住のメール相談や来所相談から始めました。自らの経験から避難移住は下見から始まると考え、カンパを集め、交通費を支援する。HPに相談掲示板を作り、支援パンフを東日本で配り始めました。

すると、昨年末から相談が急増。話せる場を求めていることを痛感します。また関西で会い、宿を案内しました。

避難希望者の誰もが重い健康被害を抱えています。被ばくの影響は甲状腺がんや心臓病が有名ですが、今回多かったのは、強烈な化学物質過敏症、電磁派過敏症など、全身を冒された人々です。被害者は事故以降に発病し、避難すると症状が回復し、関東に戻ると悪化することが続いたため、関東の被ばく汚染の影響を感じて移住を望んでいます。

事故後に過敏症が増えることは、岡山の三田医師も臨床結果から指摘し、チェルノブイリ事故でも確認されています。放射性物質は化学物質の大親分であり、前者が体内に入ると後者を誘発するからです。避難者のなかには、子どもや親の過敏症患者が大勢います。しかし棄民政策と病状悪化により、今では避難が極度に困難だとよくわかりました。

最も深刻な例は、昨年12月に相談に来た東京在住の母子です。2013年に母のAさんが電磁波・化学物質過敏症や不整脈などを次々併発し、電磁波は医者の診断書も得ました。

化学物質過敏症は、他人や自分の洋服についた合成洗剤や香水の香りだけで、あらゆる体調不良が出ます。電磁波過敏症は、電化製品、携帯電話、車や電車、街の送電線や電線鉄塔、携帯の基地局などが近くにあると体中に痛みが走ります。併発も多いです。

理解されにくい自主避難者の苦悩

企業利益を優先する日本は、規制がゆるく、送電線の鉄塔や携帯基地局の近くに簡単に住宅が建てられます。都会にも地方にも必ずあります。このため患者は住める場所が極度に限定されます。Aさんは発病の仕組みを必死に学習し、海辺など何もない場所で野宿もしてきました。しかし、避難の繰り返しも限界が来たため、私たちの呼びかけを発見し、親子身一つで関西に避難。連絡をくれて会いました。

Aさんは、東京での凄まじい症状について次のように書いています。

「電化製品が痛くて使えず、コンセントも全て抜く。電化製品から離れて玄関やベランダで寝る。頭の中に空気が入り、脳を手で書き回されるような感じで激烈に痛い。部屋では平衡感覚がなくなり壁に頭をぶつけ、尻餅をつき、四つん這いで歩く。座ることもできず動き続けた。出産を超えるほどの全身の痛みが続いた。痛すぎて大暴れしたくなるほどだ」。

Aさんは関西に来たら症状が緩和されたものの、家がないため、私たちは知人宅をあたり、大阪府内の保護施設に入居。今はそこも出たために、安住の地は見つからず、治療もできません。孤独に避難された人たちの苦しみは想像を絶します。外見は普通に見えるため、過敏症も放射能の健康被害も理解が得られません。それでも避難希望者は増えるでしょう。

これが「史上最悪の原発事故被害」の一つの実態です。当事者が話し、周囲が理解し、公団住宅の開放、医療支援体制、生活保護活用、避難者の優先雇用枠などが必要です。すでに大阪市営住宅は、月収が8万円以下なら家賃が5千円にまで下がり、月収15万円以下でも市内の2DKの部屋に3万円以下で入れる家賃減免制度を作っています。避難者が交渉で勝ち取りました。単身でも誰でも入れます。これなら避難し、療養しながら、仕事や生活再建の道を作れます。これを関西中、日本中に増やすことが重要です。また、みなさんの仕事を今後莫大に増えるだろう避難者とシェアしてください。ご協力をお願いします。

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