辺野古新基地建設の是非を問う県民投票は、投票率52・48%、埋め立てに「反対」が43万4千票余で、投票総数の7割を超えた。県民投票実施前、沖縄市、宜野湾市、うるま市、石垣市、宮古島市では、(1)普天間基地の危険除去への意思表示が含まれていない、(2)埋め立てに「賛成」、「反対」二者択一という狭い選択肢では住民の意思をカバーできない、(3)投票にかかる予算案が議会の了承を得ない、などを理由として不参加を表明し、混乱を招いた。しかし、県議会や知事が関係者への折衝を続け、選択肢を2択から「どちらでもない」を加えた3択案での実施を、不参加表明の市町村が受け入れる形で、辛うじて全県実施が決まった。
こうした混乱のなか、国は、「県民投票の結果にかかわらず辺野古埋め立ての工事を進めていく」と投票前から決めていた。事実、投票翌日に防衛施設局は、工事を再開。安倍首相も、「普天間基地の1日でも早い全面返還が最優先方針」として県民意思を無視し続けている。
一沖縄県民として私は、万が一反対票が少なかったらと、一抹の不安がなかったわけではない。しかし結果は、反対票が圧倒的多数を占めたことに安堵したのが正直な気持ちだ。
当然と言えばそれまでだが、新基地建設の反対活動に尽力してきた県民に加え、反対の思いはあれども政治的な発言や行動に躊躇し、沈黙する県民も多く、それらの県民が投票という形で意思表示、行動したことは価値ある結果であり、今回の県民投票は、価値ある機会だったと感じている。
それも「辺野古」県民投票の会の元山仁士郎代表をはじめとした若者が、昨年夏前から県民投票に向けた署名活動を開始。投票実施に至るまでの活動のみならず、5自治体の不参加表明に対しても投票実施を求め代表自身が実行したハンガーストライキが、沈黙する県民の心を揺さぶったのは間違いない。それは、過去の凄惨なる沖縄の痛みの記憶の継承者としての沖縄人の自覚を喚起したのだ。
また、一連の若者の行動が、これまで基地問題や政治のことに関心の薄かった同世代に、ツイッターやフェイスブックをとおして拡散したことで、これまでにない関心を高めた。沖縄人としてのアイデンティティを自覚し、反対であれ、賛成であれ、意思表示の必要性を実感し、行動への強い影響を与えたことも確かだ。
巨大な権力に対峙する沖縄人としての自覚と誇り
沖縄の民意、そして若者の勇気ある行動に対し、安倍政権の意を受けたかのような政治家の、そして政府の姿勢はどうか。政治的な思惑で住民を混乱に巻き込み、沖縄県民の圧倒的多数の基地反対の民意にもまったく聞く耳を持たない。その姿勢は、不甲斐なさ、茫然、失望、どんな言葉を使っても筆舌尽くしがたい。
一方、沖縄では、沈黙していた県民は次世代への責任を自覚し、若者は沖縄の不条理に目覚めた。県民投票がもたらした結果は、日本全体に反対の民意を示したことはもちろんのこと、巨大な権力に対峙する沖縄人としての一致団結を心の内で確信させたと思う。
このことは、これからも続く新基地建設の反対行動や国の姑息な揺さぶりに屈することのない沖縄人としての誇りに拍車をかけた。
やがて国は、手強い相手となった沖縄を実感する時を迎えるに違いない。ぶれることのない県民の厳しい視線を、県民投票が少なからず国内の世論に与えた影響を甘く見ると、安倍政権は痛手を負い、その未来は危うい。