【時評短評 私の直言】軍国主義の教訓忘れた過去最大の新防衛大綱と軍拡路線 柿山朗(元外航船長/元海員組合全国委員)

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 2018年12月、政府は、新たな防衛力強化の指針「中期防衛力整備計画(中期防)」を決定した。特徴的なのは、(1)護衛艦いずも型2隻の空母への改修、(2)最新鋭ステルス戦闘機(F35)の購入、うち18機はいずも型空母へ積む垂直着陸が可能なSTOVL機のB型、(3)地上配備型ミサイル=イージスアショア2基の設置、(4)宇宙・サイバー・電磁波といった新領域への優先強化、(5)新領域に陸海空の垣根を超える領域横断作戦を提示、である。

 日米の軍事的一体化を進める兵器の購入で、5年間の防衛予算総額は過去最多の27兆4千7百億円にのぼる。「いずも」の攻撃型空母化への改修については、専守防衛からの逸脱と指摘されると政府は慌てて「多用途運用護衛艦」と言い換える。専門家は、これまで一度も空母に戦闘機を着艦させた経験のない航空自衛隊にとって「ヒト」の養成に数年はかかり難題だ、と明かす。

 米軍との一体化を進める政府が、アメリカの言い値で兵器を買い、集団的自衛権の法整備に続き兵器・装備面も揃えることになる。

 変質する日米軍事演習

 2018年10月から11月にかけて自衛隊は、米インド太平洋軍と最大規模の「キーンソード19」演習を日本およびグアム島海空域で行った。参加人員は自衛隊が4万7000人、米軍は9500人で過去最大である。大分・日出生台では、自衛隊空挺団員が米軍横田基地配備のC130輸送機から空挺降下を行った。今年、習志野演習場でも同様の演習が続けられている。

 2018年10月、種子島旧飛行場跡で、国内初の島嶼防衛を想定した日米共同訓練「ブルークロマイト」が実施された。参加したのは同年3月に創設された水陸機動団と米海兵団である。内容は沖合のヘリ搭載空母型輸送艦「おおすみ」からゴムボートで上陸する訓練と、自衛隊ヘリによる米海兵隊の降下訓練である。

 これらはいずれも国内初であり、軍事演習が「共同」から「米軍指揮下」へ変質したことを示している。自衛隊の軍事訓練参加は、フィリピンでの「カマンダグ18」、自衛艦「かが」「いなずま」が参加したシンガポール海軍との訓練、インド陸軍との「ダルマ・ガーディアン18」と、南へ延びる。

軍隊は船員を守らない

 太平洋戦争で、船員は多くの犠牲者を出した。島に取り残され餓死した船員も多い。軍隊は船員を守らない、というのが戦争の教訓だが、それは現代も続く。2014年1月15日朝、前述の輸送艦「おおすみ」は呉基地を出発し、広島大竹市沖合を進行。一方、釣り客を乗せていた「とびうお」は、広島市を出て釣り場に向かっていた。両船は阿多田島東方沖合で衝突し、釣り船乗船者4人のうち船長と同乗者1人が死亡、1人が重傷を負った。

 国交省の外局である運輸安全委員会は事故調査報告書を発表し、衝突直前に「おおすみ」の前に「とびうお」が飛び込んできたとして「とびうお」全面過失の判断を下す。広島地検は、運輸安全委報告書を全面的に採用し「おおすみ」を不起訴処分。検察審査会も検察の不起訴を追認した。

 自衛艦は、特権的に海難審判で裁かれることはない。軍隊特有のねつ造や秘密主義と強い政治力に守られ、自衛隊が責任や罪を問われることはない。

 2016年5月、「とびうお」船長の妻である栗栖紘枝さんは、「真相を闇に葬らせない」として国家賠償請求裁判を提起して、険しい闘いに挑んでいる。イージス艦「あたご」と清徳丸、潜水艦「なだしお」と富士丸等々、こうしたケースは枚挙にいとまがない。島嶼防衛、南西シフトへ舵を切る日米軍事体制は、現在防衛省が傭船しているフェリー2隻で足りるはずもない。さらに多くの補油船の提供と予備自衛官としての船員が必要とされるのは、必至である。船員が軍拡に反対する理由はそこにある。

歴史認識を正すことが平和への道

 安倍政権は、ソ連の脅威、中国の進出や北朝鮮のミサイルを理由に、国民を煽り、軍拡と米国との一体化を進めた。だが、現実は反転し、ソ連とは平和条約交渉、中国とは、米中対立の中、首脳会談で安倍は習近平と手を握るほかなかった。北朝鮮からのミサイルの飛来は、昨年来1件もない。歴史の記憶を失っているから、この国は孤立する。前記の「ブルークロマイト」のクロマイトとは、仁川上陸作戦を指す。装甲巡洋艦「出雲」は、盧溝橋事件当時、上海の旗艦であった。旭日旗は紛れもなく旧海軍の艦船旗だ。さらには慰安婦・徴用工問題を抱える。日本軍国主義の犠牲になった者の口を封じることはできない。われわれは何より謙虚でなければと思う。際限のない軍拡の道ではなく、歴史認識の誤りを正すことが平和への道である。

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