1月17日午前、吉田寮を京都地方裁判所の執行官が訪れ、「占有移転禁止の仮処分」を下した。これは、明け渡しを求める訴訟の前提として被告となる占有者を固定するための措置である。今回の仮処分の対象は現棟と食堂で、数十名の寮生が「債務者」として公示された。
私たち吉田寮自治会は、京都大学当局に対して、訴訟に踏み切らず、寮生との話し合いを再開することを要求する。現棟の老朽化対策・補修は、法的措置に訴えることでは根本的な問題解決にはならない。私たちは、当局による脅迫的な退去要求には応じない。あくまで対話による合意形成を求め続けていく。いくつかのメディアで「新規入寮が禁止された」「寮生以外が住まないようにするため」などと報道されているのは、事実と異なる。
京大当局は、今後について「明け渡し訴訟の可能性は排除しない」「寮生は賢明な判断をしてほしい」とコメントしている。訴訟という措置をちらつかせながら自らに従わせようとする姿勢は、権力差を利用して他者を従わせようとする人権侵害である。
そもそも、これまでなされてきた合意形成を一方的に破棄して退去を迫る「吉田寮生の安全確保についての基本方針」それ自体が、寮生ら当事者に対するハラスメントであり、加えてこのような威圧的措置を取っていることは、仮にも教育機関として不適切である。
当局は、「やむなく仮処分の申立てを行った」としているが、寮自治会との対話を拒絶しておきながらのこのような説明は、詭弁である。これまで当局と寮自治会は老朽化した現棟の補修を行う方向で合意をしてきたが、2015年11月、川添信介副学長が就任して以降は、交渉は一方的に打ち切られた。
当局の頑なな態度こそが問題の解決を遅らせている
自治会側が最大限譲歩することで実現した2018年7月と8月の交渉の場でも、同副学長はこれまでの議論を無視、一蹴した。寮自治会側は「現棟から新棟へ移る用意がある」と、考えうる限り最大の妥協案を出しているにもかかわらず、9月以降は交渉再開を拒絶し続けている。
このような当局の頑なな姿勢こそが、現棟老朽化問題の解決を遅らせている原因であり、これを捨象して、居住を続ける寮生を非難し法的措置に踏み切ったことは、大学自治を放棄したに等しい由々しき問題である。
大学自治とは、意見の違う他者を尊重し、対話によって合意を形成していく営みによって初めて可能になる。意見の異なる相手に向き合わず、学外の権力機関をも利用して従わせる今の京大当局の在り方に、私たちは強く抗議する。
他にも、同副学長は7月13日の交渉において恫喝を行ったが、ハラスメントを当然視する発言を行い、開き直りを続けている。同副学長においては、まず自身の問題行動を振り返り、謝罪し、寮自治会との関係を修復する努力を行うべきである。さもなくば吉田寮に関して公的に発言する適格性がないことを、改めて付言しておく。