私たちの消費・労働のあり方 フリーライター 谷町 邦子

途上国の女性の就労支援を通して見る

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神戸市長田区の特定非営利活動法人アジア女性自立プロジェクト(AWEP)では、在日外国人女性への生活・法律の電話相談や生活情報発信に加え、フェアトレードによる、対等な立場で、製品の継続的な購入や販売を通して、途上国の女性の経済的自立に協力している。代表の奈良雅美さんの話を聞く中で、日本の消費や労働の姿が浮き彫りになった。

 AWEPが誕生したのは1994年。1980年代から90年代にかけて、多くのフィリピンの女性たちが興行ビザにより来日し、ナイトクラブや風俗系の仕事に就いていた。(現在は興行ビザでの渡航は制限)。女性たちは、日本人男性との間に子どもが生まれたら、扶養を放棄されることが少なくなかった。父親である日本人男性を探す女性を支援する中で、そのような問題が放置されていることに疑問を感じ、アジアの女性たちが置かれている状況を学びたいと女性たちが立ちあがったのが、グループとしての活動のきっかけだという。ちなみに、父親である日本人男性は、コンタクトをとっても養育費を払わない人、責任を取ろうとしない人が多い。

 その後、AWEPはフィリピンへ帰国した女性の仕事づくりのためのフェアトレード製品の企画・販売、外国人女性のための情報発信などに活動を広げていく。さらに、フェアトレード商品を扱う国も、フィリピンに加え、タイ、インドネシア、ネパールと増えていった。

 インドネシアの場合は、現地から女性が中心になって作っているバティックの布など、伝統的な技術で作った製品を販売してほしいというコンタクトがあったのがきっかけだった。タイも同様だという。アジアの最貧国で、現在も人身売買が横行するネパールでは、女性の仕事を作ることで人身売買を防ぎ、被害にあった女性たちを救助し、再教育や就業支援をしている現地の団体と連携し、フェアトレードという形での支援を開始した。

それぞれの国の特色を活かした良質な製品を

 フィリピンとネパールでは、AWEPが製品の企画を行う。どのような製品が日本で売れるか、女性たちの技術、現地で手に入る材料を考慮し提案している。技術的に難しい場合は調整・変更するなど、双方のやり取りの中でデザインが決定されることもある。

 奈良さんは、現地の素材、伝統的な織や染、刺繍の技術を活かすことだけでなく、クオリティも重視。「『フェアトレードだ』というだけでは売れないので、そうでない製品と比べて遜色がない、素敵だねって言ってもらえるような製品を作るように心がけています。『応援だから』『形が多少曲がっていても買ってよ』ではなくて、より優れた技術が発揮されたものを作っていきたい」という。

94年からのアジアの、日本の変化

 活動当初、支援している国々では日々の生活が困難で、人身売買が目前に迫る女性も少なくなかったが、経済的な発展、社会的な成長を遂げ、女性を取り巻く状況も変化した。例えばフィリピンの場合は、多くの企業の進出により、国内でオフィスワークに就くなど、女性たちの職業の選択の幅はある程度広がった。

 その結果、国によっては若い女性たちが縫製やクラフトなどのものづくりに携わる動機づけが低下し、担い手を確保するのが難しくなっているそうだ。

 このような状況について、どのように捉えているのだろうか。

 「変化は社会の発展の一つの形だと受け止めています。同時に、絶対その国の伝統の小物を作らなければいけないというのは、女性に対する縛りであり、エンパワメントにならないですよね」(奈良さん)。都会から離れるとフィリピンでもまだまだ貧困や人身売買の問題が残っているので、フェアトレードを通した支援を行いたいと思っているが、交通アクセスが難しい地域への支援は、ボランティア中心で運営するAWEPでは財政的、組織的に難しく、今後の課題となっているそうだ。

 また、フェアトレードの浸透により、AWEPで製品を買うお客さんにも変化があった。以前は発展途上国の女性の仕事づくりを支援したいと、国際協力的な意識で購入する人が多いようだったが、最近は「これが自分にとって必要で、素敵かどうか」を消費者として求める人が多く、買い手として厳しい目で見ている、と感じている。

消費者として商品の背後にある労働を考える

 奈良さんは、さまざまな背景や事情、地域や国の人たちと同時代に生きている私たちが、安い商品を買えることは、貧しい人たちの搾取の上に実現している可能性があると指摘する。

 「例えば390円の安いお弁当を買ったとしても、もしかしてこれは、工場で働いている日系人やアジアの人の搾取の上に作られているのかもしれないし、選べるのであれば、不当に安くないものを選ぶという意識を持ちたい」(奈良さん)。

 もちろん、安いものを選ばざるを得ないこともある。しかし、何かができるわけではなくても想像することが大切なのだという。また日本の現政権において、移民は認めないとしつつも期間を限定した外国人労働者の受け入れが検討されていることについては、「外国人による労働を挿げ替え可能なパーツのように扱うのは、国としてどうなのだろうか」と疑問視している。また、そのような政策を推し進める行政や国会議員を投票で生み出した、私たちにも責任があるとも考えている。

 さらに、奈良さんは「外国人労働者へのまなざしは、結局日本社会の労働へのまなざしと同じだ」という。それは、現在、景気が良くなってきていると言われているのに、働く現場の環境や体制が良くなっていないからだ。

 「そもそも働くということ、労働して賃金を得るという考え方、ものの値段の付け方や消費者としての選び方をトータルで考えないといけないと思います」(奈良さん)。

 貧しい人々を犠牲にしない消費や労働のあり方。私たちは政治に関わる時に加え、日常品を買う時やサービスを受ける前に、一度手を止めて考える必要があるだろう。

特定非営利活動法人アジア女性自立プロジェクト AWEP(アウェップ) 神戸市長田区海運町3-3-8たかとりコミュニティセンター内
電話・FAX :(078)734-3633 E-mail:awep@tcc117.jp HP:https://tcc117.jp/awep/

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