自分を、仲間を守る「痴漢抑止バッジ」 フリーライター 谷町 邦子

デザイン審査に参加する中学・高校生たち

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 2015年から続く「痴漢抑止バッジデザインコンテスト」が今年も開催された。9月10日までに、学生から寄せられた約730作品ものデザインは、ボランティアの大学生によって約60作品に絞られ、10月初旬から日本各地の中学生、高校生によって入選12作品が選定される。

 今回は、初めて審査に参加する大阪府立港高等学校(以下、港高等学校)を訪ねた。

バッジのデザインを見つめる真剣なまなざし

 港高等学校での痴漢抑止バッジの審査が行われたのは、10月5日16時。女子5名、男子3名の生徒会メンバーが参加した。

 一般社団法人 痴漢抑止活動センターの代表、松永さんは、審査を開始する前に、痴漢抑止バッジの効果(2016年 浦和麗明高等学校の生徒70名に行ったアンケートで約94%の生徒が「効果があった」「効果を感じた」と回答)を述べ、女子はかわいいと思うデザインや、身に着けたら痴漢に遭わなくなりそうなデザイン、男子は自分の彼女や好きな子など大切な人が痴漢にあってほしくないという気持ちで、自分だったら「痴漢を止めよう」と思うようなデザインを選ぶよう審査のポイントを説明した。

 生徒たちはデザインを真剣に見ながら、キャッチコピーやバッジができるまでの経緯についてなどを松永さんに質問した。実際には投票権はないものの、教員も一緒にデザインを見ながら、生徒たちと言葉を交わしていた。

審査を通して痴漢抑止バッジに出会う高校生たち

 審査を終えた生徒に質問したところ、全ての生徒が今まで痴漢抑止バッジを知らなかった。女子生徒からも「初めて聞いた」「自転車通学なので関係ないと思っていた」などの声が上がった。

 一方で、「最初に痴漢抑止カードを作った女の子はえらいと思った」という意見もあった。

 オオカミのデザインを選んだ男子生徒は、「目つきの鋭さがいいと思いました。痴漢される側ではないのでわからないこともありますが、『痴漢はこんなバッジをつけている子には触りにくいだろうな』と考えて選びました」。

 また、「デザインは痴漢が触りたくなくなるようなインパクトがあり、なおかつ着けやすそうなもの、というポイントで選びました」と答えた男子生徒も。

 松永さんは、「審査に携わったことが、被害が起こる前に先生と生徒が痴漢問題についてフランクに語れる機会となれば」と語る。

 中学・高校生たちに選ばれたデザインは、11月7日からあべのハルカス近鉄本店ウィング館5階 ウォールギャラリー、そして公式サイト上での最終審査(一般投票)となる。

「被害の後で話を聞くだけでなく、前向きな対策がしたい」

 中学校・高校での痴漢抑止バッジの審査には、開催する学校の協力が欠かせない。

 今回、初めて生徒によるデザインの審査を行った大阪府立港高等学校は、どのような考えで生徒を審査に携わらせることにしたのか。同校の氣賀校長は、学校の特色や現状、そして生活指導の側面から審査に参加した理由を語った。

 港高等学校は最寄り駅から徒歩3分で、電車通学の生徒が多く、女子生徒の割合が大きい。

 現在の1年生は65%程度が女子。2年生、3年生は女子が60%程度だったが、今年はさらに女子が増えた。そういったことから、生徒が痴漢被害に遭う可能性が高いのではないかと考え、痴漢抑止バッジの審査に生徒を参加させることにしたという。

 また、氣賀校長は大阪府高等学校生活指導研究会で会長を務めるなかで、痴漢問題に関して踏み込んだ対策をしたいと考えていたそうだ。

 「生徒が痴漢被害に遭った時、担任の先生が女性など話しやすい場合は担任へ、そうでない場合は養護教諭に話すことがほとんどです。生徒指導の教員に直接話す生徒はほぼいません。被害が起こってしばらくして、養護教諭から『被害に遭った生徒が動揺している』など情報として伝わることはあるのですが」

 被害後、他の教員から話を聞くことしかできない現状を変えたい。痴漢抑止バッジがあれば生徒が被害に遭う前に「これを使ってみたら?」とアプローチができるのではないか、と考えたそうだ。

 今回で4回目となる「痴漢抑止バッジデザインコンテスト」は、大人の協力を得ながら、若者を主体とし、広がっている。今後もより多くの人たちが、それぞれの立場で当事者意識を持ちながら、痴漢抑止活動に参加していくことを望む。

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