マイケル・ムーアの『華氏119』をみた。朝日新聞にムーアの映画はプロパガンダに過ぎないと揶揄する記事があったが浅薄な意見だ。政治的主張があることは何らマイナスではない。その主張のためにウソ情報や洗脳手法が使われているわけでもない▼ただ私があの映画作品からいちばん感銘を受けたのは、米国の隠れた大衆運動が紹介され、そこに力と希望があることが示された点だ。公立小学校教師の労働運動とストライキの広がり、粘り強い戦い。もう一つは、高校生など若い世代の銃規制運動。従来は、銃による乱射事件に対して祈るだけで民主党主流も政治問題化を避けてきた。ムーアはそれを批判し、政治的行動こそが必要で、それを行ったのが若者たちだという。それは民主党の主流派の偽善=主流秩序従属性もあぶりだすものだった▼それとつながっている現象が、中間選挙の下院で民主党の主流派ではなく、左派系の新人女性が多数当選したことだ。初のイスラム教徒女性議員2名、初のアメリカ先住民女性議員2名など多くの新人女性が議員になった。日本を含め世界ではヘイト・極右のミニトランプたちが増殖しているが、同時に、それに対抗する大勢が運動している。ムーアの映画は、その希望を明確に指し示すものだった。 (H)