米・メキシコ・カナダ貿易協定(USMCA)の悪夢 ベンジャミン・ダングル (翻訳:脇浜義明)

北米自由貿易協定(NAFTA)に代わる

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 メキシコにとってNAFTAは最悪だった。1994年に調印されてから25年後、メキシコ労働者の賃金は1980年当時と同じで、いっそうの貧困に陥った人々は約2000万人、NAFTAの関税方針のために農業を辞めた農民は500万人、そのためメキシコの経済成長はラテンアメリカ20か国中15位の低さだ。

 NAFTAは米国労働者にも破滅的影響を与えた。「NAFTAによって毎週企業は仕事をメキシコへ下請けに出すので、米国では約100万人の雇用が失われた。しかもメキシコの下請け労働者の賃金は安く抑えられたので、彼らの実質賃金は中国沿岸部の労働者のそれの40%ほどになった。それが米国労働者の賃金引下げ圧力になった」と、国際貿易市民監視団のロリー・ワレクが言った。

 USMCAは、トランプと新条約で利益を得る企業にとって大勝利であろう。石油・ガス産業の最大ロビーである米国石油協会の会長は新協定を支持し、「米国のエネルギー革命を未来にわたって保障するもの」と言った。環境保護団体は大反対だ。

 食と水の監視者のハウターは、「USMCAはGMO(遺伝子組み換え食品)への規制を緩和し、メキシコのGMO規制を後戻りさせ、モンサントやダウ・アグリサイエンスのような巨大化学企業に、殺虫剤などに関する安全性データを10年間秘密にできる権限を与えた」と批判している。しかも、「新協定はパイプライン建設と天然ガスと石油の輸出を奨励する条項があり、米国とメキシコで環境と人間生活を破壊するフラッキング(水圧破砕法)が加速するだろう」と語る。

 新協定には他にも問題点がある。NAFTAには、他国の慣行や法律が投資会社の利益には不利な場合は企業がその国の政府を訴えることができる「投資家対国家の紛争解決」(ISDS)という悪名高い条項があった。ISDSは、企業によるクーデターのように投資先国で猛威を振るってきた。 

 自動車産業に関する変更もある。米国・カナダ・メキシコなど北米を自動車原産地とする義務付けを現行の62・5%から75%に引き上げて、関税をかけない、としたのだ。これが意味するのは、自動車生産拠点をアジアや他の地域から北米地域へ引き上げるということだ。さらに、2020年からは自動車製造に従事する労働者の30%は時間給16ドル、メキシコ労働者の賃金の3倍にあたる

 USMCAは、来年米議会の批准を経なければならない。「やたらと企業の力を高め、労働者と消費者と環境を痛めつけてきた米国通商政策を、根本から変革すべきだ。USMCAは、米国の大失敗の通商政策をいっそう強めるだけだ。

(出典:Zコミュニケーション・デイリー・コメンタリー、2018・10・4)

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