期限最終日は祝祭空間に
耐震基準を満たしていないなどの名目で、京都大学により全面退去を求められている吉田寮。退去期限最後の9月30日の夜、寮生など40人が出演する芝居が3時間にもわたって披露された。深夜0時、期限を迎える日付のその変わり目は、まるで新年を迎えるかのような祝祭感に満ちあふれた。
共有スペースである食堂に集まった寮生・支援者は50名以上。精一杯の声でカウントダウンを行い、ジョン・レノンの「パワー・トゥ・ザ・ピープル」をBGMに、「自治寮貫徹、闘争勝利」のシュプレヒコールを叫んだ。寮生たちの「不法占有」生活の始まりには悲壮感はなかった。炊き出しが行われ、あちこちで会話に花が咲いた。これからはこうした当たり前の日々を続けることが闘いになる。期限日以降も100名以上が居住の意志を示している。
早朝4時、年配の新聞配達員が寮を訪れた。新聞はもう来ないはずだった。受付に集まって雑談をしていた寮生たちに小さな声で挨拶し、刷りたての新聞を手渡した。「これは私からのカンパです。この記事があるから…」―沖縄知事選での玉城デニー氏の勝利が大きく報じられていた。配達員は「当局は冷たいね」と寂しそうに微笑んだ。別れの挨拶とこれから始まる闘いへのエールであった。新聞をはじめさまざまなライフラインが停止するかもしれないのだ。新聞には確かに人間の温もりがあった。
当局が電話を切断退去通知の張り紙
午前11時頃、当局は電話を停止させ、職員を訪問させて寮の玄関に退去を促す通告書を貼った。話し合いを求める寮生に、職員は「書いてある通りだ」と型通りの答えを返すことしかできなかった。
寮自治会と大学は既に2012年・15年には、補修工事を進めることで合意に達し、あとは補修案を具体化するだけだった。しかし川添副学長の就任以降、「検討中」のまま公開質問状にも回答をしないで2年も放置。一方的な退去通告が出されたのは昨年12月のことだ。 なぜ補修計画を覆したのか、築3年の新棟からも退去を迫るのか、代替宿舎に移動した学生の中に政治活動を禁止された人がいるのか、なぜ退去後の計画を隠しているのか。大学側の対応の異常さが目立つ。自治会は引き続き対話を求めているが、大学側は質問をはぐらかし、大声で恫喝し開き直るなど、強硬な姿勢を崩さない。 (編集部・吉田一平)