【本 BOOKS】「左派の反緊縮運動を!」

『そろそろ左派は〈経済〉を語ろう』ブレイディみかこ 松尾匡 北田暁大 亜紀書房 ¥1700+税

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 「左派とは何か?」を問い直す意欲的な好著だ。著者3氏の鼎談という形をとりながら、各氏の具体的な経験も盛り込まれながら話は展開していく。「下部構造を忘れた左翼」(第1章)、「今こそニューディール政策を」(第2章)、「左派こそ経済政策に力を入れよう」(第3章)など挑発的な見出しが矢継ぎ早に繰り出され、刺激的な内容となっている。

 私が最も注目したのは、第4章の「階級問題を隠蔽する社会」としての日本の姿を、自らの経験から描き出しているブレイディみかこさんの経験と主張だ。みかこさんが高校生の時、定期代を稼ぐためにアルバイトをやっていたことを教師に咎められたあげく、「嘘つくな。遊ぶ金欲しさにやってんだろう。いまどきそんな家庭があるわけない」と叱責されたという。「この国では家が貧困であることすら認めてもらえない」(松尾)という現実だ。  「貧困といっても衣食は足りている」という批判の渦の中で、「すぐそこにある貧困が不可視化されてしまって」(北田)いるのである。こうした雰囲気を「私の存在の全否定」と喝破したブレイディさんの感性は、日本の姿を見事に言い当てている。それは、生保受給者に対するバッシングなど巷にあふれている。

 本書の目的は、米国のサンダース現象、英国のコービン人気、さらには、スペインのポデモスに見られるような「反緊縮」をスローガンにした日本の左派大衆運動の再構築だ。戦後左派の流れを総括して、バージョンアップを呼びかけている。「左派の反緊縮運動を!」(松尾)

 左派とは?との問いに、「リベラルは自由や平等や人権を訴える金持ち。レフトは自由と人権を求める貧乏人」(みかこ)。「リベラルと区別されたレフト」とは、徹底して「貧乏人」の目線で味方であろうとすること。「貧困」ひいては「社会」を語る自らの立ち位置と眼差しが問われている気がした。

 松尾匡氏には人民新聞としてインタビューもお願いしたし、幾度か講演会にも参加させていただいた。氏の穏和な顔つきや語り口とは対照的に、挑戦的な語りには、自らもレフト3・0への飛躍を遂げようとする志と決意が込められていると確信している。

 本書にさまざまな批判が寄せられていることは承知している。しかし、左派を自認するなら、また左派であろうとする者なら、必読書だ。  (編集部・山田)
 

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