【連載(3)韓国の新たな運動】立ち上がる韓国の女性たち 朴藝智(パク イェジ 交差性フェミニスト連帯記)

「江南駅殺人事件」女性嫌悪が生命の問題に  翻訳・影本剛

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 前号で紹介した、女性嫌悪殺人といえる「江南駅殺人事件」を追悼する女性たちに、よく思わない男性たちが非難をしはじめた。あげくの果てには追悼現場に現れ、「男性を嫌悪する女性たちは真の追悼をするのではなく偽物だ、彼女らはごたごたを起こし、被害者の死を汚している」とプラカードを掲げるデモまでした。

 女性たちは事件の衝撃に続き、男性たちの無理解と、自分たちが潜在的犯罪者だと烙印づけられることに過度に反応する拙劣さに、より大きな衝撃を受けた。

 ある犯罪心理学者は、社会的雰囲気が悪くなれば社会的弱者に対する犯罪が増え、その中でも韓国における「女性」に対する犯罪が増える理由は、女性嫌悪現象のせいである、と分析した。他の国では老人に対する犯罪も増えるが、わが国は儒教国家なので孝行の考えが広がっており、老人に対する犯罪は起こりにくいのに対して、女性嫌悪の雰囲気が強く、女性が簡単に凶悪犯罪のターゲットになる。しかし、警察当局は専門家の意見と女性たちの叫びを無視したまま「犯人は女だから殺したと述べたが、これは女性嫌悪の犯罪ではなく精神障害による通り魔殺人だ」とした。

 この事件以降、韓国の女性たちは女性嫌悪問題を「生命の問題」と感じるようになり、男性たちと国家はこの問題に対し徹底して無関心なので、女性たちは自らこの問題を解決せねばならないという意識を持つようになった。この事件によって、韓国の青年男性と女性たちの関係は極度に悪化した。

ポスト「メガリア」と運動の分裂

 続いて「ウーマッド」(ウーマン+ノマドからなる造語)が登場する。ウーマッドはゲイに対する意見差によって「メガリア」から分化し、16年に誕生したサイトだ。あるメガリア利用者が、自分の夫がゲイで、夫が自分を騙して結婚して、自分に家事ばかりさせ、夫は家庭を捨てて恋人と性生活を楽しんでいる、という文章を投稿した。

 これに対し女性たちは怒った。この怒りは、あげくの果てにゲイ全般に対する怒りへとつながり、「糞穴虫」というゲイを嫌悪する単語まで言及された。

 これは、メガリアが抵抗していく方向性と重ならなかった。自分たちに向けられた嫌悪表現をはね返す「ミラーリング」は急進的な戦略ではあったが、女性を嫌悪する一般男性、つまり社会の多数者や権力者に向かう攻撃であった。メガリアは、ゲイやトランスジェンダーのような性的マイノリティーを共に歩む存在として、ともに性的に平等な社会のために運動すべき方向性を持っていた。しかしこの事件によって、ゲイを嫌悪する分派が大きくなり、メガリアではゲイ嫌悪発言を禁止した。これに反発したゲイ嫌悪勢力がメガリアから独立したのが、ウーマッドだ。

 ウーマッドは「韓国型TERF」であるといえる。「TERF」はTrans-Exclusionary Radical Feminismの略語であり、トランスジェンダーやゲイなど、生物学的男性とされる性的マイノリティーたちを排除する分離主義者たちだ。

 かれらは、ただ生物学的女性のみをフェミニズム運動の主体として認める。「あらゆる性的マイノリティーが同等な権利を得る性的平等社会」を夢見る、主流のフェミニズム運動の基本的な方向性から抜け出たかれらは、フェミニストたちから激烈に批判された分派だ。

 かれらが生ずることで、メガリアはいくつかに分裂することになり、結局長持ちせずに力を失い、有名無実となり閉鎖された。現在はサイトすら残っていない状態だ。

 メガリアがネット上でただ「言語」のみを使用したミラーリングを戦略的に使用したのに反して、ウーマッドは現実において行動をもってミラーリングを実行し、社会にさまざまな物議をかもした。(次号に続く)

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