前号でお伝えした女性嫌悪に対抗するために、ネットのサイト「メガリア」が誕生した。MERS(中東呼吸器症候群)ウイルスと「イガリア」の合成語だ。イガリアは作家・ガード・ブランテンバーグの「イガリアの娘」というSF小説作品に由来する単語であり、作品の中のイガリアという国には男女の権力関係が反対になっている。
彼らの怒りに対し、男性たちはなぜこんなに女たちが怒っているのか理解できず、何より女もこんな乱暴な言葉を使えるなんて、女もこんな笑わせてくれるなんて、お前ら実は男なんじゃ?という反応をした。しかし韓国男性の性器の大きさに対する執拗な攻撃が続くと、男性たちは自分たちを攻撃しているのが女性であると悟り、彼女らを狙って押し返しはじめた。
コミュニティー管理者もまた男性であり、その間の女性嫌悪掲示物に対しては傍観していた運営者が、男性を攻撃する掲示物はただちに遮断するようになると、女性たちの怒りは大きくなるばかりだった。結局8月になり、別個にメガリアというサイトを創設した。これらの登場は、日刊紙一面を飾るほど社会的に相当な影響を呼び起こした。
「サフラジェット」という20世紀初めの英国と米国の女性参政権運動家たちが起こした「落書き運動」を見本にし、女性の権利に対する自覚を促す内容を、ポストイット(付箋)に書いてあちこちに貼る「ポストイットプロジェクト」も始めた。韓国の地下鉄には最近になって盗撮禁止の広告がたくさん貼られるようになったが、こうした社会的変化を起こしたのも、みなメガリアのおかげだ。
メガリアはインターネット上のコミュニティーサイトから始まり、参加者がネット利用者たちであったので、デジタル性暴力にとりわけ敏感だ。なので、盗撮を退治するために多くの努力が注がれた。多くの会員らが自費で盗撮退治ステッカーをつくり、公衆トイレに貼る運動を行い、地下鉄に広告を出し、キャンペーンを行った。
「ソラネット」を閉鎖させたのもメガリアン(メガリアの会員たち)たちだった。韓国最大の不法ポルノ動画サイトであり、会員数はなんと100万人に達していた。主に盗撮した女性の動画が掲示されていた。公衆トイレにこっそり設置して女性の排泄を撮ったり、自分の妹や母がシャワーしているところ、性売買の女性との関係、あるいは交際相手や妻との性関係を撮った映像を公開し、それに対し評価をする書き込みが行き交い、誰でも制限なく見ることのできるサイト(場所)だった。
メガリアンの運動によって広く知られ、女性たちは衝撃を受けた。これを契機にデジタル世界のなかで若い女性が経験する差別とストレスが爆発し、メガリアンたちはさらに積極的な活動をしはじめた。
このサイトでは、酒に酔って意識を失った女性を「巻貝」と称し、意図的に泥酔させ、女性を失神させた後、女性の露出写真をアップし、生中継で強姦を募集する書き込みが時折なされた。女性たちはこのような事態を発見し、強姦を防ぐために掲示版をモニタリング(監視)して警察に申告したが、警察はこれが本当かわからないとして出動しなかった。緊迫した事態にもかかわらず、これほどまで無関心な公権力に、女性たちは精神的トラウマ(外傷)を負った。
これに対し、メガリアンたちはネット上で賛同を集めるサイトであるAVAAZに、ソラネット閉鎖請願運動を起こし、7万名の署名を集め、国会議員に請願した。陳善美議員はこの請願を受け、警察庁長官と対談し、結果的に警察庁長官は15年11月にソラネット捜査と閉鎖を国民に約束した。ソラネットは翌16年4月に閉鎖された
明白な女性嫌悪「江南駅殺人事件」の衝撃
16年5月17日深夜1時、江南駅近くのビルのトイレで、ある女性が一面識もない男性に殺害された。犯人は14年まで神学院に通っていたが中退し、教会で働いているときに教会の女性たちに無視されたなど、社会生活のなかで女性たちにしばしば無視されたので犯行した、と述べた。犠牲になった被害者は23歳の女性。被害者は友人らと酒を飲み、一人でトイレに行ったとき、その中で待ち構えていた加害者に刺殺された。 犯人は彼女を殺害した理由に対し「彼女が女だったから」だと述べた。実際に被害者がトイレに入る前に、別の男性たちが同じトイレを利用したが、犯人はその男性たちに触れはせず、初めて入って来た女性を殺害した。これは明白な「女性嫌悪」殺人であった。
江南駅は韓国最大の繁華街の一つだ。深夜でも昼間のように明るく、無数の人々が行き交う場所であり、韓国人の多くが夜中まで遊んだことのある場所だ。そこで自分たちと同世代の女性が一面識もない男性に、ただ「女だという理由」だけで殺害されたという事実に、女性たちは計り知れぬ衝撃を受けた。被害者があまりにも平凡な女性だったがゆえに、自分と同一視したのだ。
女性たちは、韓国社会の女性嫌悪が女性の生命を威嚇するほどにまで極まった事件だと受け取った。それに反して男性たちとマスコミは、この事件を単純な「通り魔殺人」として受けとり、「女性嫌悪」事件であることをしきりに否定しようとした。彼らが男性であるがゆえに、女性らが経験する恐怖を全く知りえず、無感覚であるとともに、「女性嫌悪」と称することで男性たちを「潜在的加害者」と称することになることが居心地悪いからだ。
被害者に共感した女性たちが江南駅に集まり、追悼のポストイット(付箋)を貼ったり献花をすることで社会化されるや、よく思わない多くの男性たちが「他人の死を利用するな」や、「フェミニストたちがこの事件を自分の私益に利用している、被害者に触れるな」、また「真の追悼ではない」と言い、追悼する女性たちを非難し始めた。(次号に続く)