【連載】 パチンコからカジノ法案に至る官製ギャンブルの正体(3)  元パチンコ店経営 李 達冨

負けた金を必死に取り戻させようと依存病者を増やすシステム 

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 今年の2月に、「マックスタイプ」パチンコの新規設置を認めない新たな規制ができた。この動きを「日本駆け込み寺」代表の玄秀盛氏は朝日紙上で「勝ちにくいよう出玉の上限が引き下げられた」としているが、間違いだ。

 「マックスタイプ」とは、初回の大当たりを引くのに金がかかり、その分うまく連ちゃんの波に乗ると戻り(儲け)も大きいタイプだ。分配金が5人から2人に減り、代わりに2人の取り分は大きくなるものなので、マックスタイプが規制されると、1人当たりの勝率は上がる。つまり、分配金は下がるが、勝ちにくいようになるのではない。

 また、同氏はパチンコに「どぼっとはまるのは、働いていない人が圧倒的に多いんや」とも言っているが、「どぼっとはまる」のは、負けたお金を必死に取り戻そうとするからだ。安月給で真面目に働いている人が、パチンコで数万円勝てればと淡い期待を抱くから、期待に反して大負けすると冷静さを失い、負けを取り戻すために通い詰める。パチンコ店が毎日営業しているから、通い詰めることができる。

 公営ギャンブルだと、次回開催までの間に冷静さを取り戻す。多くのギャンブル依存症は負けを必死に取り戻そうとすることから始まる。ギャンブル依存症は、資本主義社会の疎外現象だ。多くのギャンブル依存症者は、膨れ上がり続ける借金の大きさに、自殺しか選択肢がないと思われる状態に追い込まれる。街金に手を出した場合、返済圧力のプレッシャーも相当だ。

 カジノ推進派は、カジノもパチンコも常設だからギャンブル依存症が生じることを知っている。だから入場回数制限を行うと言っているわけだ。 一方、カジノで使うお金は、人によってはパチンコの比ではない。よほどの富裕層でないと、回数制限内でも借金せずに通い続けることはできない。借金を重ねた挙句、自殺しか選択肢が残らない人が確実に生まれる。

カジノ成功の秘訣はどれだけ重度の依存病者を増やせるか

 日本の富裕層や海外の富裕層を想定しているなら、回数制限は不要だ。一億円以上の資産をもつ層が、日本には100万人以上存在する。しかし、低所得層が借金を含み大金を使っても同様の利益だ。

 強制された自殺=殺人を引き起こすような政策で経済活性化を図らず、富裕層への累進課税率を新自由主義革命前の水準に戻せば、財源はできる。しかし、安倍政権と維新の会は、カジノ構想で経済活性化を謳う。 

 薬物依存、アルコール依存、ギャンブル依存は、人間性の本質と社会の在り方が結びついた社会病理現象だ。依存症を社会病理現象として捉える観点が欠落すると依存症者の自己責任に議論が回収され、依存症拡大のメカニズムにおける人為的関与が見過ごされ、結果的に責めを負うべき人が免責される。ギャンブル、覚せい剤、アルコールは、供給が需要を生む商品、サービスの典型だ。

 アメリカでは、年間6万人が薬物依存で亡くなる(ニューヨークタイムズ)。カジノでも多くの自殺者が出るだろう。現在パチンコ業界では重度のギャンブル依存症者が減り、その分、多くのパチンコ店が厳しい経営環境にある。パチンコ同様、「カジノの成功はどれだけ重度の依存症者を生み出せるか」にかかっている。依存症対策に実効性があった場合、カジノ構想は失敗するということになる。(次号に続く)

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