一般社団法人痴漢抑止活動センターは、今年で4回目の「痴漢抑止バッジデザインコンテスト2018」を実施。協賛は(有)ミノルサービス、大阪市男女共同参画のまち創生協会、大阪弁護士会の後援、Osaka Metro日本橋管区駅、コンテスト情報サイト登竜門の協力で行われる。コンテストで活躍するのは主に若者である。2018年8月1日~9月10日にデザイナーを志す学生に公式サイトでデザインを募集。採用するデザインの審査には中学校、高校の生徒が、生徒活動やボランティア活動の一環として携わる。その後、11月7日~27日を一般投票期間とし、あべのハルカス近鉄本店ウイング館5階ウォールギャラリーで展示し、投票を受け付ける(公式サイト上での投票も可能)。12月上旬には授賞式を行い、受賞作品5作品は商品化、販売を予定している(540円/税込)。
代表の松永弥生さん(以下松永さん)は、痴漢抑止バッジの意義を「痴漢被害から子どもたちを未然に防ぐことができる」「加害者も生まれず、冤罪被害も起きない」ことだという。
学生対象のデザインコンテストは今年で3回目。「継続開催していくことで10年後の社会を変えたい」という松永さん。コンテストの意義や目的を大阪市の中央会計セミナールームでの記者会見で語った。
学生にデザインを募る理由
コンテストの対象者を学生としているのは、電車やバスなど公共交通機関内で被害者になりやすい高校生と同じ世代の感性でデザインしてほしいからです。「私は痴漢に遭ったことないから」、「電車通学じゃないから」「男だから関係ない」、と他人事としてとらえず、同世代の仲間が被害に遭っていることを知り、デザインの力で痴漢問題を解決しようと取り組んでほしい。被害者を孤立させないでほしいと思っています。
デザインだけでなくデザインのコンセプトやバッジデザイン活動へのメッセージも募集しています。去年は次のようなメッセージがありました。
「私も痴漢に遭ったんだけど、このバッジで無くなってほしい」、「高校生だった時に、友だちから痴漢に遭ったという話を聞くたびに胸を痛めていました。何かしてあげられることはないか、そう考えてもピンと来るものはありませんでした。大学生になり、バッジを使う抑止方法や普及活動に携わる方がいることを知り、お手伝いができないかと思い、参加しました」。 また、自分の友だちや彼女から痴漢に遭ったという話を聞き、その思いからコンテストに参加したという男子生徒もいました。
学生の頃に痴漢問題の解決方法を考える機会があった彼ら・彼女らは、ジェンダーについて関心の高いデザイナーとなり、社会に出て活躍すると思います。ポスターや商品のパッケージ、CMなど、世の中のあらゆるものにはデザイナーが関わっています。
デザインに携わる人々が、今までとはちがったジェンダー意識を持ってデザインし社会に発信してくれたら、世の中が変わるのではないかと希望を持っています。
審査に関わる意義
デザインだけではなく、中学校・高校の生徒たちにデザイン選考の2次審査をお願いしています。昨年は大阪市立南港南中学校、芦屋学園高等学校、浦和麗明高等学校など計7校が審査に参加してくれました。
中学生・高校生が痴漢に遭った時、大人に相談するのは非常にハードルが高いです。バッジのデザインをみんなで選ぶことが、被害に遭う前に大人と痴漢問題に関して話すきっかけになれば、いざという時に相談しやすくなるのではないでしょうか。
自分で自分の身を守れる子どもたちが、10年後には子どもを守れる大人に成長できると期待しています。
2016年度のコンテストの審査に参加してくれた兵庫県立芦屋高等学校の生徒たちは、2017年度の審査の際、私たちが協力をお願いする前に「今年はバッジの審査はやらないのですか」と先生に申し出てくれたそうで、非常に喜んでいます。生徒たちも、自分たちが選んだバッジが商品化されるのがうれしいのでしょう。
より多くの人に痴漢被害と抑止に関心を持ってもらうために
最終審査は学生以外の、一般の方にも関わっていただきます。あべのハルカス縁活ウォールギャラリーに、2次審査を通過した12作品をパネル展示し投票を受けつけます。
駅ビルという商業施設でパネル展示することは、多くの方に10代の子どもが痴漢被害に遭っていることの周知につながると考えております。親子でバッジのデザインを選びながら理解を深め、解決方法を考える機会となるのではないでしょうか。
これまでにコンテストで選ばれたデザインは、バッジとして製品化され、南海鉄道のコンビニ「アンスリー」やイトーヨーカドー津久野店、東急ハンズあべのキューズモール店などの店舗に加え、公式サイトで販売しています。駅で販売し、多くの方の目に触れること、そして女子高生たちがバッジを付けることが啓もう活動になると考えております。
男性にも広がる関心
痴漢抑止バッジ作りはクラウドファンディングによって立ち上げたのですが、支援してくれた方の4割が男性で、40代~60代の方が活動に共感してくれました。
また、最初はネット通販の購入者も4割が男性。娘さんやお孫さんに持たせたいという年配の方がいらっしゃいました。バッジが初めて製品化されたのは2016年の3月末だったのですが、4月には「東京にいる娘が、就職して3日目に電車内で痴漢に遭ったと泣きながら電話してきた。すぐにバッジを送りたいのですが」というお問い合わせがありました。通勤電車に乗る男性の中には痴漢がいることも知っているから、年頃の娘さんがいる方は切実に心配なのだと思います。
また、バッジへの支援が「何かしたいが、個人ではどうすればいいのかわからない」という男性の受け皿になっているとも考えています。
10年後を性犯罪のない社会に
デザイナーを目指す若者がデザインし、中学生・高校生が選ぶ。そうすることで、家庭に帰ってから保護者との会話も生まれると思います。
より多くの人が痴漢犯罪に対して関心を持ち、解決方法を考える機会を少しずつ増やしていくことで、10年後の社会が、誰もが安全で安心に過ごせる社会、性犯罪を許さない社会になる。そして社会全体で子どもを性的虐待から守る、そうなることを望んで活動を継続しています。