2月28日、毎日新聞の一面に衝撃的な数字が出た。福島の公立小中の避難4町村の地元通学は就学対象者の4%で、「子育て世代は戻らない」と報じている。
4町村の地元校への就学率は、浪江町=0・7%。富岡町=1・3%。飯館村=15・6%。葛尾村=21・7%。
主な理由は、避難生活の長期化で、学校や職場などの生活基盤が避難先に移ったことという。若年層の減少で地域の存続を危ぶむ4町村は、修学旅行や給食の無料化、避難先からの通学バス運行などで児童生徒の確保を図る。また同避難解除区域の居住率は2割弱で、約半数を高齢者が占める。これら4町村は「学校」を地域再生の拠点と位置付けているが、現状は極めて厳しい。
浪江町の学校再開の計画づくりに携わった境野健児福島大教授(地域教育論)は、「充実を図った学校の維持費が自治体にとって負担になる心配があり、国には長期的な支援が求められる。少人数でも魅力ある教育を地道に続け、原発事故で崩れたコミュニティーの再生のためにも、帰還した住民に開かれた学校を作る必要がある」と、国の長期にわたる支援の必要性を指摘している。
生活の根本が欠落増える事故関連死
「放射線量は下がった。生活インフラも整った」として帰還を促した解除地域では、「生活」に関わる根本の部分(医療・福祉・コミュニティー・文化)の欠落があきらかになりつつある。
避難指示解除区域の解除時期と住民の居住率を表にする。第一原発がある双葉町・大熊町は、避難指示は解除されていない。
また福島県の事故前と18年現在の推計人口は、202万4401人から187万6293人(18年2月1日現在)に減少。避難者数は16万4865人(12年5月)から5万628人(18年2月現在)に。原発事故を含む震災の人的被害は直接死が1605人、関連死が2195人、死亡届が224人、行方不明が2人となっている。関連死が異常に多い。
東電が福島原発事故後、農畜産業者や商工業者、被災住民らに支払った賠償金は18年2月23日時点で約7兆9900億円。廃炉費用は当初2兆円の予定だったが、実際には10兆円をこえると想定されている。現在も東電第一の敷地では毎日約5千人の労働者が廃炉作業に従事し、労災事故も頻発している。
また、17年12月25日付けの福島県民健康調査報告書によれば、小児甲状腺がんおよび疑いの子どもたちは193人。うち手術を終えた160人の中で良性結節だったのは1人だけで、157人が乳頭がん、1人が低分化がん、1人が甲状腺がんと診断されている。つまり「悪性ないし、悪性の疑い」のうち99%は小児甲状腺がんであった。通常10万人に1人の確率のがんであるが、福島県は異常に高い。
増え続ける放射性廃棄物
さらに最終処分場になるのではないか?と県民は懸念している放射能廃棄物中間貯蔵施設が昨年より稼働を始め、学校敷地内に埋設されていた汚染物質の搬出が始まっている。除染廃棄物は福島県だけでも最大2200万トン、東京ドーム18杯分だが、最終的に福島県以外の処分場がみつかるとは思えない。
他にも、浜通り漁民vs汚染水放出、賠償打ち切りに抗議する住民集団訴訟の頻発、自主避難者への家賃補助の打ち切り問題など課題は山積している。アンダーコントロールどころか制御不能だ。
7年が経過し、福島県民が奪われた自然と命の風景は二度と戻らない。私たちを育て見守り励ましてくれたその故郷は、あらあらしくも放射能により踏みつぶされた。いまも第一原発に向かう国道6号線には、誰もいなくなった商店や民家が、時が止まったまま存在している。