【本紹介】『四日市における自然エネルギー問題』四日市大学教学課編集(2017年3月31日刊行)

三重県や四日市の里山と人へのソーラーの影響について 大今歩(京都府・元高校教師)

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 本書は、2016年12月2日に催された四日市シンポジウムをまとめたものである。

 四日市では森林面積がわずか14%程度しかない状況なのに、桜町と足見川の2カ所でメガソーラー計画が進んでいる。2カ所で森林の4・1%を占めるという。実現すると、貴重な緑地を失い、沢水など河川への影響が心配される。

 さらに、貴重な動植物が生息している山林や湿地帯をつぶす自然破壊につながりかねない。そのようなリスクのある事業が、果たして本当に「環境にやさしい」のかどうか、疑問に思われる。こうした問題意識から本シンポジムは開催された。

太陽光発電は本当にエコなのか

 福島原発事故後、「地球温暖化」防止にも役立つとして太陽光や風力発電など「自然エネルギー」を推進しようという声が、「脱原発」派の間でも強い。

 しかし「里山の現状とメガソーラー計画地の問題点」の講師である寺田卓二氏は、「再生可能エネルギー、太陽光発電を作ることはいいことじゃないですか」という問いに対して、「これから人も減って、いろいろエネルギー効率も上がるでしょう。今以上にもっと電気エネルギーって作らないといけないの? ほんとに(里山を)なくしてしまっていいの? 一度絶えてしまった命って作れないよ」と述べる。

 私も自動車で走っていて、里山を削ったり農地をつぶして太陽光パネルが林立していることに、心が痛む。パネルの下には陽があたらないので、草木は全く生えず、里山では土砂災害を起こしかねない。省エネルギーにより電力消費を減らすことにこそ努力すべきと思う。

 また、「自然エネルギーの問題点―太陽光は本当にエコなのか」の講師の武田恵世氏は、「風力発電とか太陽光発電などを増やす理由は、地球温暖化防止のはず」なのに、「実は火力も原発も全く減らせていない」とする。その理由として、太陽光・風力発電は発電量が不安定なため、火力発電に頼らざるを得ないからである、と述べている。

発電量の変動で排気ガスが増える

 太陽光や風力が増えたら、その時間帯だけでも火力が減らせるとの見解に対しては、アメリカのコロラド州のデータを用いて次のように述べる。

 風力の変動に合わせて火力の出力を調整しているが、風の弱い火力だけの日より、風が強くて風力発電からの電力を入れた方が、排気ガスがかえって増えた。車の燃費が、急停止、急発進を繰り返すと悪くなるのと同じだという。また、蓄電池も、2000kWのNAS電池で1~3億円と、大変高価で採算が合わないという。

 そして、一昨年9月、茨城県の鬼怒川大洪水が起きたとき、自然堤防を壊してソーラーパネルを並べた場所が決壊したことが一因であった。

投機の対象になる自然エネルギー

 このように、「自然エネルギー」は、CO2削減の役に立たないし、自然災害を増発させる。にもかかわらず、再生可能エネルギーが推進される理由について、武田氏は次のように述べる。

 「今、再生可能エネルギーは、発電しようというより投機で儲けようという状況です。これらは、インターネットで見られますけれども、『土地付き 太陽光投資 最低利回り11%』と、たいへんな高利回りをうたっています。(中略)発電より投資なんです」。

 利回り目当ての投資のために田畑や里山が壊されてはたまらない。

 このように本書は、四日市におけるメガ・ソーラー計画による里山の深刻な状況、および太陽光発電などの自然エネルギーの問題点を、的確に指摘する。

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書代は無料で、送料のみの負担で送ってくださるので、ぜひ購読をすすめたい。

●問い合わせ先
三重県四日市市萓生町1200 四日市大学教学課 電話059-365-6716

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