【文化欄】映画評 「港町」

監督・想田和弘

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 2015年に映画「牡蠣工場」を発表した想田和弘監督が、新たに映画を撮った。「牡蠣工場」は、岡山の瀬戸内海の牡蠣工場で働く外国人技能実習生のドキュメンタリーだ。一切の解説なしでその実態を見事に描き出す、その精神に感銘をうけた。

 「牡蠣工場」は、説明がなくても日本在住の技能実習生のうける扱いの理不尽さを理解できた。ところが、新作「港町」のチラシは「泡沫夢幻 空前絶後 ドキュメンタリー映画の臨界点」とある。「美しく穏やかな内海。孤独と優しさ」と続く、予想がつかないものだ。舞台は「牡蠣工場」が瀬戸内海の港町だったことから、その近辺だろうか。

 登場人物は、80代の高齢者ばかり。男は終始寡黙、女はしゃべりまくる。内田樹は「『私の思いが伝わるはずがない』という絶望に似たものが感じられる」と分析している。

 釜ヶ崎ではよくある光景だが、高齢女性の発言は意味がわかりにくい。しかし、映画では説明が省かれている。

 「釜ヶ崎はこわくない」と言う支援者もいるが、住人である私は「こわいまち」だ、と言っている。日本中から「怖い人」として追い出された人が集まっているのだ。得体の知れない存在を怖がるのは当然である。

 「怖い」という感情は自らを守る大切なものだ。しかし、それを乗り越え、挑戦せねば新しい世界は開けない。その壁を越える手助けをする私と、監督の違いに気付かされた。

 答えが用意されていない作品に反感をもつ人もいるだろう。しかし、観る人が問われているのだ。

 「港町」は4月よりイメージフォーラム他ロードショー。4月21日より第七藝術劇場で上映。(阿修羅)

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