在日韓国・朝鮮人(筆者は「在日コリアン」という用語を拒否する)は、三つの国家(日・韓・朝)と対峙しながらこの国で生きている。筆者は、「三つの国」を「クニ」で対象化し、その作業を経て、近代国民国家などという抑圧態ではない「くに」に住みたいと思う。
現行「日本国憲法」は、「9条(戦争の放棄)」「14条(法の下の平等)」「25条(生存権の保障)」などの条項が素晴らしいのであって、それらが「第1章(天皇)」と完全に矛盾することは、一目瞭然であろう。特に「第一条 天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く」として、象徴(symbol)天皇制の基礎を国民主権に置いているのだが、その「国民の総意」は一度も確認されていないという事実が、象徴(symbol)天皇制の欺瞞とペテンを語って余りある。
さらに、現行「日本国憲法」には国民ないし国民主権と題する章はなく、第1条と憲法前文のみが「国民主権」を根拠づける条文に過ぎない。また、「第3章」に登場する人権享有主体としての「国民」に、天皇と皇室に属する個々人が含まれないことは、常識の範疇に属する。即ち、彼・彼女らは、「象徴・世襲制」の具現者である限りにおいて、充分過ぎるほどの富と名誉と「衣・食・住」をあてがわれているだけであって、「選挙権、政治的発言権」などを有しない点は「外国人並み」である。
まさに「貴あれば賤あり」(松本治一郎)だ。「日本国民の総意に基づく象徴(symbol)天皇制」の方便は、言わずもがな「大日本帝国憲法」から「日本国憲法」への不承不承の(reluctant)変更を物語る痕跡物である。
多民族・民主共和国にむけて
筆者は、日本国憲法の条文を以下のように改正することを訴える。
●第一条 日本国は、多民族から構成される民主共和国である。日本国の主権は国民に存し、すべての権力は国民から由来する。
●第二条 天皇制は、これを永久に廃絶する。 部落差別は、これを徹底的に根絶する。
●第三条 日本国の国民となる要件は、法律で定める。 日本国の民族構成とその要件は、法律で定める。
●第四条 戸籍制度と帰化行政は、これを廃棄する。
●第五条 沖縄県には住民自治権を保障し、国家主権の一部を譲渡する。
●第六条 アイヌ民族の先住権を認め、独自の教育・文化・産業を育成する。
●第七条 日本国は軍隊を有せず、国内にいかなる軍事基地も設置しない。日本国は非核国であり、領土内にいかなる核施設も設置しない。
この国に「天皇制と戸籍制度」がある限り、我々「在日」は、その「国民」に落とし込められることを断固拒否する。同時に、現存する朝鮮民主主義人民共和国と大韓民国双方の「公民・国民」に落とし込められることを、我々「在日」は断固拒否する。ましてや、日本国民(いつか「人民」に成長してほしい…)が現状に甘んじて、あるいは「護憲運動」の名の下に「日本国憲法第一条」を擁護するのなら、この国は永遠に「在日のクニ」にはならない。ましてや「くに」になど、なるものかや。