ウエストバージニア州の教員と校務員は、2日間の州一斉ストを行った。健康保険負担額が増えて天引きされ、実質的減給になったことへの抗議である。ウエストバージニア州の教員給料は合衆国48位という低さで、教員が集まらないばかか、教員の州からの脱出が相次いでいた。
去年の暮あたりから不満を持つ教職員がネットなどで連絡を取り合い、マーチン・ルーサー・デイに州都に集まって議会にデモをかけようと計画した。その噂が広がり、ついに全米教育協会(NEA)加盟のウエストバージニア州教育連盟が正式な集会を企画した。草の根有志の運動から組合運動へと成長したのだ。
やがて各郡の教職員がスト批准投票を行い始めた。ウエストバージニア州にはNEA系列とAFT(米国教員連盟)系列の二つの組合があり、他にもスクールバス運転手、学生食堂従業員、用務員、事務員などのウエストバージニア州学校職員協会(WVSSPA)もあった。スト批准については、どの組合であっても、非組合員であっても、批准投票できると決定された。バッシャムスが務める学校では49対9で批准成立。チャップマンビル地域高校、ローガン郡、ミンゴ郡、ワイオミング郡の学校もスト。スト批准が成立しなかった郡学校区では、始業前職場集会を行った。
スト教職員は州都に集結。前のNEA集会は150人だったが、今回は1000人規模となり、生徒の保護者の参加もあった。ワイオミング郡教職員は、地元支援者が用意してくれたバス数台に乗って参加。州議会議事堂ロビーは一杯になった。「ロビーはすぐに満杯で私らは入れなかった」とバッシャムス。「それで通路で議員を待ち、訴えました。足を止めて聞いてくれる議員や、俯いたまま足早に逃げ去る議員など、さまざまでした」。
議会は、地方公務員健康保険料引き揚げの一時凍結と来年度給料の2%引き上げを発表した。しかし、教職員は、一時凌ぎ解決ではなく、恒久的解決を求めている。同州の公務員には団体交渉権がなく、給料は議会で決定される。低い給料では教員が集まらないので、郡によっては独自に地方税で支援している。
健康保険負担金増額と給付の引き下げが教員ストに火を付ける
「低給料だけど、健康保険などの福祉があるので我慢していた」と、3年生担任教師でラレイ郡組合支部長のウェンディ・ピーターズは語った。
ところが、知事と州健康保険庁は保険負担金増額と給付の引き下げを数回にわたって決定した。負担額は給料所得者の収入でなく、家族全体の所得に基づいて算出する、という方法を採った。他にも退職者の保険負担増額や手の込んだ証明の提出の義務付けなどを課した。健康保険制度から脱退した者には税控除額を500ドル増やすなどの恩恵を与えて、保険制度を潰そうとした。
ジャスティス知事は、2016年にWVEAの支持を受けて民主党から立候補したのだが、知事になってから共和党に転身した。「教育こそ州の最重要課題だと言っていたくせに、裏切られた」とバッシャムス。
ウエストバージニア州は戦闘的組合運動の歴史が─とりわけ州南部の石炭採掘地域の労働組合の闘いの遺産がある。今回のストでも、教職員は、1920年代に石炭労働者がしていた赤いハチマキを着用した。保護者たちも学校にピケを張ってスト破りを防ぎ、幾つかの郡教育委員会や教育長がスト支援声明を出した。
ローガン郡では、最初教育委員会は「一部教職員の不法行為のために学校を休校とせざるをえない」というメールを保護者に送ったが、一週間後、「我々教育委員会は、児童生徒の教育に献身している教職員の給料と健康保険給付の上昇を支持する」という声明を出した。
訳者後書き
その後、教員ストはオクラホマ州、ケンタッキー州、アリゾナ州、コロラド州へ広がった。この背景には教育民営化、公立学校潰し、教育予算と福祉予算を削って軍事費へ回す、教員の首切りというトランプ政治への対抗がある。だから、地域社会や地域教育行政機関までが教員ストを支持するのだ。生徒のストと合わせ、社会の周辺部からの反乱として、楽しい現象である。