共産党推薦候補が予想外に善戦
去る4月8日、京都府知事選挙が行われた。候補者はいずれも新人。1人は自民、公明、民進、立憲民主、希望の5党が推薦する官僚上がりの西脇氏。もう1人は共産が推薦する弁護士の福山氏。
国政では「もりかけ問題」などで与野党対決の構図が鮮明だが、与野党相乗りの非共産系候補と共産系候補との一騎打ち。投票の結果、西脇氏が福山氏を破って初当選した。
両者の票差はおよそ8万票。だが、共産推薦候補としてはここ40年で最高の得票率だ。郡部などでは大差をつけられたものの都市部では健闘し、とくに京都市左京区では2500票差で逆転してもいる。客観的に見て善戦と言えるだろう。
京都と言えば、7期28年を務めた蜷川府政が有名だ。共産党と社会党(当時)の支持を軸に公害対策や福祉行政を軸に府政を推進し、いわゆる「革新自治体」の先駆と称された。もっとも、長期政権に伴う弊害や社・共両党の軋轢などもあって保守系の巻き返しが進んだ結果、78年以降は「非共産(相乗り)対共産」という構図が続く。
とはいえ、その後も京都では依然として共産党の力が根強い。府議会と京都市議会では現在、いずれも自民に次ぐ第2党を占め、府内の地方議員の議席占有率も全国トップを誇る。
ただそうであるが故に、これまで共産党はあえて外部に連携を求める必要がなく、共産党との連携を求めようとする勢力も現れなかったのだろう。こうして「非共産対共産」の構図が定着して以降、投票率は50%を割るようになった。
共産党と市民運動の連携
今回もこれまでと同じパターンに見えるが、実は新たな動きが見られた。これまで相互に疎遠だった共産党系とそれ以外の市民運動との連携だ。
たとえば今回、共産推薦候補の選挙母体の呼びかけ人を見ると、これまで反戦平和や環境保護などの市民運動を牽引する一方で共産党系とは一線を画してきた人々が少なくない。
こうした動きの背景にあるのが「市民と野党の共闘」路線だろう。驕りと独善にまみれた安倍政権を倒すには、党利党略ではなく、可能な限り広範な連携が必要だ。昨年の衆院選における新潟で顕著なように、これまでの行きがかりを乗り越え、各地で連携を模索する動きが続いている。
今回の知事選挙も、そうした趨勢の中で捉えることができる。とくに今日のような政治状況では、与党批判票の受け皿として改めて有効性を示したと言える。
加えて政策面でも、府政の全面転換ではなく「よいところは継承する」と主張したり、「地元密着型」と限定をつけつつ「公共事業を積極的に進める」とするなど、これまでの共産推薦候補とは異なる訴えが行われた。「非共産対共産」の構図を突破しようとする姿勢の表れだろう。
立憲民主党が野党共闘にブレーキしかし支持層は「まっとうな」判断
にもかかわらず、既成政党からは、従来の構図を突破しようとする動きは生まれなかった。とくに立憲民主党が非共産相乗り候補の陣営に加わったことは、大きな失望を招いた。
これまでの歴史的な因縁や支持母体の労組の意向などがあるとはいえ、国政での振る舞いとは明らかに整合性を欠いている。有権者のシラケムードを後押しし、投票率の低下にも影響したのは間違いない。
今回、社民党と自由党はもちろん、なぜか日本維新の会までが自主投票を決めた。立憲民主党の支持者からも「せめて自主投票に」との要望書が寄せられたが、自己保身に余念のない幹部連中の耳には届かなかったようだ。
その一方、立憲民主党の支持者は、枝野代表の口癖ではないが、極めて「まっとうな」判断をした。実に6割近くが共産推薦候補に投票したことが明らかになっており、選挙戦で共産推薦候補の応援に加わった人も少なくないという。希望の持てる動きだ。