3・30土地の日から70年目のナクバ

トランプの金による中東支配に抗し新しい道を模索するパレスチナ人民 東日本成人矯正医療センター 重信房子

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イスラエル軍の虐殺と民族浄化後押しするトランプ

 パレスチナでは、3・30土地の日からナクバ70年目の5月15日まで、苦難の中で抗議行動を強化し、パレスチナ人の「帰還の権利」を訴える闘いを宣言しています。 ガザの境界近くにテント村を設営し、5月15日まで数万人が泊まり込む計画が発表されましたが、イスラエルの無差別射殺が心配です。トランプは、パレスチナ人の抗議を無視しイスラエル、サウジアラビアとともにパレスチナ問題の「解決」を語り始め、5月14日には、エルサレムの米大使館移転に「英雄」のごとくイスラエルを訪れようとしています。

 トランプ政権は、イスラエル軍の虐殺と民族浄化を促進し、占領を併合へと進める道を後押ししています。日本でもBDS(イスラエルボイコット)運動が強化されることを願っています。

 4月1日、パレスチナ人デモ隊に対する無差別攻撃とハマース施設への空爆と砲撃。ガザは、2014年以来の被害を受けています。30日「土地の日」デモでも、15人が殺され1400人超が負傷しました。何をしてもトランプ政権が支持するので、ネタニヤフ政権は、ますます凶暴になっています。
トランプ政権の登場は、資本主義の劣化と、露骨な帝国主義支配を象徴しています。その典型は、国際法や国連決議を無視した「エルサレム首都宣言」であり、宣言撤回を求めた国連総会決議に向けては、「撤回案賛成国には米の援助停止」で恫喝したことに示されました。カネで主権を収奪する無法が、支配の方法として深まりつつあります。

 2016年12月、国連安保理はイスラエルの入植活動に対する非難決議を行いました。米国が拒否権を行使せず、棄権したためです。その結果、入植地建設は「いかなる法的正当性も無い」として、「ただちに入植活動を全面停止すること」を求めました。

 ところがこの決議を罵倒したドナルド・トランプが大統領に就任すると、国際法を無視して中東情勢を不安定化させています。オバマ政権と対立していたイスラエル、サウジアラビアと同盟関係を強化し、「反イラン危機」を作り出しています。ネタニヤフ政権に肩入れし、サウジに対しては、巨大な武器取引とサルマン皇太子の主導する「ビジョン2030」の経済改革によって米企業に奉仕させる構造です。

 これに加えて「エルサレム首都宣言」は、シオニスト右派をして、「もはやパレスチナ占領地を返す必要はない」という論調を跋扈させています。イスラエルのNGO「ピースナウ」によると、2017年にイスラエル政府は占領地入植地に6072棟の住宅建設を許可。リーベルマン国防相は今年、3600棟以上の住宅建設を進めると発言しています。

 さらにネタニヤフ政権は、昨年12月のリクード(ネタニヤフの与党)中央委員会で、西岸地区の重要部分(入植地、戦略軍事施設など)をイスラエルへ併合するよう求める決議を採択しました。このネタニヤフプラン=「シオニスト計画」は、トランプ政権の「米の中東和平案」として提案され、西岸併合を日程に上らせようとするでしょう。

 ハアレツ(イスラエルのリベラル紙)によると、2014年頃にネタニヤフがオバマ政権に提案したプランが明らかになっています。それは、(1)イスラエルが西岸地区の大部分を併合し、(2)代償としてエジプトのシナイ半島北部をパレスチナに割譲させ、(3)将来のパレスチナ国は西岸の一部(自治政府の管理しているパレスチナ人密集地域)とガザ地区およびシナイ半島で構成させる、というものです。

 さすがにサウジとアッバース自治政府は拒否しましたが、「オスロ合意」(93年)は、当時反対した人々が主張したとおりイスラエルの支配から抜け出せなくなるという現実を生み出しています。

 また、「トランプ和平案」がサウジの若き独裁者サルマン皇太子からアッバース大統領に示されましたが、その内容は、パレスチナ国家は認められるが、(1)西岸地区の「パレスチナ領土」は寸断され、(2)西岸地区の入植地はほとんどイスラエルに併合される。さらに、(3)パレスチナの首都は東エルサレムではなく郊外のアブ・ディス村とし、(4)パレスチナ人の帰還の権利「国連決議194」は放棄する、というものでした。
 この「トランプ案」は、パレスチナ人に主権どころか自治も制約されたバンツースタン国家を押し付けています。

「エルサレム首都宣言」はパレスチナの対立を越える契機に

 「エルサレム首都宣言」をめぐってPLOは、米国が仲介する和平交渉拒否を決定し、1967年のグリーンラインに基づくパレスチナ国家をイスラエルが承認しない限り、イスラエルの承認は取り消すことを決定しました。

 しかし、「オスロ合意」に基づいて支援国会議の財源に依存しているアッバース大統領は、政治的批判以上の対策を打ち出せず、支持は地に落ちています。

 加えてトランプ政権は、UNRWAの基金の支払い凍結という圧力でパレスチナ人を黙らせようとしています。1億5000万ドルのうち半額を凍結し、530万人を超えるパレスチナ難民の生命を脅かしています。トランプ政権の「世紀のディール・中東和平の実現」とは、「カネによる支配」であり、サウジも密かに共同しています。

 カネによって他国の主権を制限するこうしたやり口は、米の資金援助を受けているエジプト、ヨルダン、イラク、レバノンなどに対して行われる可能性が大きくなっています。 しかし、一方的なイスラエルへの肩入れ、とくに「エルサレム問題」に示されたイスラームへの侮辱は、トランプ政権の圧力や意図に反して、新しい動向を生み出さざるをえません。

 特徴的には、「ポストIS」で対立を脱皮した新しい枢軸=ロシア、トルコ、イランのヘゲモニーが影響力を強め始めています。また露骨な締めつけは、PLOの復権や、イスラエル・米に依存しないパレスチナの新しい道の模索を生み出しています。

 すでに「二国家案」は崩壊しており、「一国解決」によって平等を求める声もあります。どの解決案も、アッバースら「自治区」の視野ではなく、パレスチナ解放闘争の原点であるイスラエル占領地内外の500万人を超えるパレスチナ難民の意志を無視しては成立しえません。自治区のPA(パレスチナ自治政府)PLC(パレスチナ立法評議会)は、全パレスチナ人の国会PNC(パレスチナ国民会議)の一部にすぎません。

 今こそPLO、PNCによって全国民投票を含む未来を決定する新しい出発こそ問われています。ファタハかハマスかという対立を越える全パレスチナ問題の解決、つまり「帰還の権利」をどうするかを決定すべき時に至っているのです。その問題を射程としたパレスチナ勢力の再編・再建こそ、何より重要な戦略としてあります。   (1月27日)
UNRWA(国連パレスチナ難民救済機関)基金…2016年12億4000万ドル拠出金で賄われている。米国は、パレスチナ人の「帰還の権利」である「決議194」を拒否するイスラエル支援のため、難民支援に拠出してきた。

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