0年目のナクバ(大厄災) 非暴力デモは続く

国連が認めた「帰還の権利」はパレスチナ独立国家の原点  重信房子(東日本成人矯正医療センター在監)

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 パレスチナ難民は、パレスチナのナクバから70年目の5月、「帰還の大行進」を実行しています。70年前のナクバ―イスラエルの民族浄化策動―によって追放された国連登録だけでも72万人を越えたパレスチナ難民は、今では587万人を越え、パレスチナ人口の半分以上を数えます。

 1948年、第一次中東戦争の休戦中、国連総会はパレスチナ人の「帰還の権利」を認める決議194を採択しました。「故郷に帰って隣人と共に暮らしたいと望む難民たちは、早くそうできるように、また、難民たちが戻らないことを選ぶ場合には、その財産を補償すべきである」と。これを一貫してイスラエルに拒絶されながら、国連決議194は、毎年更新され、パレスチナ難民の権利を認めています。この「帰還の権利」の実現こそ、パレスチナ解放闘争の本質であり、パレスチナ独立国家の基礎をなすものです。

国連決議を無視するトランプのイスラエル第一主義

 国連決議や合意を無視する米・イスラエル政府は、93年の「オスロ合意」によっても、パレスチナ難民問題に関しては最終的な地位交渉で話し合うと棚上げにし、決議194を拒否し続けてきました。そればかりか、イスラエルシオニストは、米国の権威によって「エルサレムはイスラエルの首都」を認定させる最終地位交渉で、論議すべきもう一つの「エルサレム帰属問題」を交渉の議題から取り除くことを企てています。

 すでにネタニヤフ政権になってから「オスロ合意」は放棄され、「二国解決」をなし崩しに破壊し、西岸地区の入植地や水源・戦略地点の併合を進めてきました。

 米国トランプ大統領は、自らの支持基盤強化のために、キリスト教福音派の要求に沿って「米国第一主義」ですらなく、「トランプ第一主義・イスラエル第一主義」の中東政策を実行しています。トランプ・ネタニヤフ政権の企む和平案は、すでにはっきりしています。

 第一に、パレスチナの「帰還の権利」を認めない、第二に、エルサレムはイスラエルのものであり、パレスチナが首都にしたいなら、エルサレム郊外のアブディズ村なら認めよう、ただし、西岸地区は入植地などイスラエルの要求に合わせて併合し、残ったパレスチナ密住地域はパレスチナに返すので、国とするなら認めてもよい、とする考えです。

 その構想に基づいて、イスラエルは西岸地区の入植地を拡大し続けてきました。それを前提とした「直接和平交渉」を認めない限り、イスラエルは交渉に応じる考えはなく、トランプ政権もイスラエルの主張と一体化し、パレスチナへの圧力を財政的に強めてきました。米下院では、イスラエル軍に殺されたり獄中にあるパレスチナ人に対する自治政府の支払う遺族一時金や年金にも介入し、それらの支払い停止を求め続け、援助額から差し引くことを決議しました。軍事・政治・経済的にパレスチナ側に降参と隷属を強いています。

虐殺にも屈しないパレスチナ民衆

 こうした弾圧と不条理に対して、パレスチナ側は米国大使館移転式典への各国の代表のボイコットを訴えました。86カ国の招待国のうち23カ国が式典に臨みましたが、参加した国々の多くは米国の財政支援をあてにしている国々です。

 パレスチナ人の怒りは、特にガザでは「帰還の大行進」に向けた統一した闘いが3月7日に決定されました。ハマース、ファタハ、イスラーム聖戦、パレスチナ解放人民戦線、パレスチナ人民党(旧パレスチナ共産党)ら指導部が一つになって、「帰還の大行進と境界を突破するための最高民族機構」を設置しました。 そして、3月30日から5月15日まで「帰還の権利」を世界に訴え、また、ガザ地区の非道な封鎖解除を求め、占領と併合に抗議する非暴力直接行動を決定し、延べ数十万人が非暴力の抗議を実現してきました。ことに5月14日・15日は「前進の日」として境界を越える非武装抵抗デモを呼びかけてきました。

 こうした行動に対して、イスラエルは、3月30日から実弾によってパレスチナ人を虐殺し、行進を止めようと躍起になっていました。非暴力の叫びに実弾を使わざるを得ないところに、イスラエルの恐怖とジレンマがあります。5月14日だけでも60人を越える非暴力の人々を銃弾で殺し、2000人を越える人々を負傷させています。イスラエルには、非暴力抗議すら通用しないことを証明しました。

 パレスチナは、ナクバか虐殺かという惨事を迎えながらも、決して不正義に屈する考えがないことを帰還の行進で示してきました。パレスチナ人民が今も虐殺に抗して立ち向かうのは、奪われた権利を一歩でも取り戻すためです。「もしも闘い続けなかったら、パレスチナは忘れ去られていただろう。闘いだけが平和と希望を実現する道だ」―これは代を継いだパレスチナ人の生存の闘いなのです。

 パレスチナ人としての権利を奪うことによって、イスラエルシオニスト政府は中東で平穏に暮らす権利を自ら放棄しているのです。

世界に広がるパレスチナ連帯イスラエルの暴虐非難

 「帰還の大行進」を呼びかけた「最高民族機構」は、ラマダンの開始と民衆の虐殺抗議を受けて、この闘いを6月上旬まで引き続き闘いぬくことを決定しました。

 一方、パレスチナ指導部は4月末から5月にかけて、9年ぶりにPNC(パレスチナ国会に相当するパレスチナ国民議会)を開催しましたが、新しい戦略を打ち出せず、トランプの「エルサレム首都宣言」と「移転」を非難して、「『エルサレムをパレスチナ国家の永遠の首都』とするパレスチナ国家の樹立をめざす」と、5月4日PNC最終宣言を採択しています。PNCが高齢のアッバースをPLO議長に再選したところに、またPNCをハマース、PFLPもボイコットしたところに、アッバースらがパレスチナの直面する問題を解決するための構想や国際社会への戦略を見出せずにいることが示されています。

 国際社会に、今こそ「パレスチナ難民の帰還」を正面に据えて解決することこそ、民族的に最重視すべきだと示しましょう。「帰還の大行進」は、国際社会のみならず、パレスチナ指導部にもそれを突き付けています。パレスチナ自治区に限らず、パレスチナ人民の統一を視野としてPLOを再建し、アラブ人民・政府・国連と共同して決議194にもとづくパレスチナ難民の最終的解決のためのパレスチナレベル、アラブレベル、国際レベルの会議と機関の準備こそ、このナクバの70年に開始されるべきなのです。

 「国家外交」の限界を踏まえ、かつてパレスチナ解放の闘いの中で重視してきた新しい闘い方こそ求められています。「BDS運動」に示される国際的な市民の共同と連帯は、人民連帯の持久的な力で、各国政府を動かしてきました。

 日本でも「パレスチナ連帯、ガザと共に! 15日間行動」として、5月1日からナクバの15日まで大阪・梅田ヨドバシカメラ前で抗議・連帯行動が行われたように、世界の各地で、人民・市民がイスラエルの暴虐を越えるパレスチナの闘いに連帯しています。その力は小さいかも知れませんが、希望はそこから育っていくでしょう。

 ナクバの70年目に、再び解放の要、パレスチナの「帰還の権利」の実現を願ってやみません。また、このナクバの5月、共に闘ったリッダ闘争の仲間たちやパレスチナ解放の闘いに殉じた数知れない人々に敬礼を送ります。

 HP掲示の「ナクバから70年目の5月に―パレスチナ難民の『帰還の権利』実現を」も参照ください。

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