水道事業民営化法案 水は住民の生命線民間に売り渡すな

多くの水道管が耐用年数を超える  大阪・高槻市議 高木隆太

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水道法改正案は衆院を通過したが、海外では民営化により高額化した水道水を使えなくなる問題も多発している。今国会成立は見送られたが、再提出の可能性も高い。政府は大阪北部地震の水道管破裂を民営化の口実の一つに挙げた。(編集部)

大阪震災を口実に民営化を宣伝

 6月18日の大阪北部地震で、自宅からほど近い府道に敷設されていた水道管が破裂。大きく陥没した様子が、テレビに何度も映し出された。その水道管は耐用年数の40年を超え、設置から55年が経った老朽管だったため、以前から指摘されてきた大阪府の老朽管率の高さが改めて問題視された。

 ところが、これを予測していたかのように今国会では、水道法改正案が提出されており、法案の目玉でもある「水道事業の民営化によって、老朽管の更新が加速する」などといった宣伝がされた。こういった災害や危機的状況に乗じる手法は安倍政権の真骨頂だが、ほとんど注目されてこなかった水道民営化がにわかに知られることになった。ただし政府の思惑は外れ、どちらかといえば批判の声が高まることになったのではないか。

 民営化はコンセッション方式と呼ばれ、民間企業が厚労省の許可を得て、自治体から水道の運営権を買い取る。政府は、(1)経営の効率化や水道料金の値下げ、(2)施設の更新の促進等につながる、などの利点を挙げるが、果たしてそうか。

 すでに知られているように、90年代に世界各国で上下水道の民営化が進み、水メジャーと呼ばれる大手資本が水ビジネスを独占してきた。その結果、水道料金の高騰(フランスでは265%の値上げ)、水質の悪化(南アフリカでコレラの大量感染)や劣悪な雇用環境などが問題となっている。また、企業との契約を解除した自治体は損害賠償を請求されている。水が使えなくなった貧困層の市民は暴動を起こした。

 こうした経過から、各国では水道の「再公営化」が進められ、民主的な運営制度に改められた。

水道施設は50年で50兆円の更新費用利潤目的ではできない公共事業

 周回遅れで民営化をもくろむ日本政府は、各国の「失敗例」を踏まえ、(1)自治体が条例で料金の上限を定めたり、(2)国と自治体で事業運営の監督、モニタリングを行う、などとしているが、どこまで実効性があるのかわからない。

 また、行政の介入を強めるのなら、そもそも民営化する必要はない。結局は民間企業にうまみのある内容になっていくのではないか。

 水道施設は、今後50年間で50兆円をこえる更新費用が見込まれている。大阪府では、事業の維持が困難になる小規模自治体から大阪広域水道企業団との事業統合を開始し、経営基盤強化のため、将来的には「府域一水道」を目指している。それでも水道料金の値上げは避けられないだろう。しかし、その解決策が民営化でないことだけはあきらかだ。

 法案は、参議院の議事日程の都合により、今国会での成立は見送られた。しかし、また提出される可能性は大きい。今回の地震で、私の住む地域で断水があった。応急給水の現場に行くと、列をなす住民のために水道部職員が大車輪で働いていた。利潤目的の民間企業に同じことができるだろうか。

 7月の豪雨災害でも、上下水道の重要性が改めて認知された。住民の生命線を売り渡してはいけない。

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