連載:みんな「居場所」を求めてる(3)~乾物と生活雑貨 すみれや~

「明るい老後計画」から始まる場所

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 <明るい老後計画>を生き活きと語る変わった店主がいる。そんな類まれな店が京都市左京区田中にある。自分にとっていい職に出会えることは、案外難しい。おばあちゃんになってからもできる仕事や暮らし方を、30代のときから考えていた、と語る「すみれや」店主の春山さん。食品、雑貨のお店「すみれや」と、近くの出町柳にあるカフェ「かぜのね」との両店の運営に携わっている。どちらにもレンタルスペースが隣接してあり、広さが異なり用途によって使い分けることもできる。春山さんにとって、<場>の提供というものがとても重要な意味をもっていることが分かる。

自然に話できるカフェ「かぜのね」も運営

 NGOスタッフや大学教員の経験のなかで、どうやって市民の側から政治にアプローチするかを考えていたそうだ。大学のなかでは勉強するが、市民運動やNGOの催しは壁が高く感じて参加しなかったり、研究室ではこちらは評価する側になってしまい、議論に不自由さを感じていた。お茶や音楽などのなかで自然とそのような話ができるような場の雰囲気からのアプローチが「かぜのね」であり、「すみれや」は食品、モノからのアプローチであるという。

 NGOでの活動や自由貿易などの経済の問題について考えてきた経験から、現在の経済の仕組みに対抗するものはなにかと考えたときに、その土地に根付いたじいちゃん・ばあちゃんの技術、知恵や文化ではないか、と行き着いた。気づいたときにはもうおじいちゃん・おばあちゃん、あと10年もつかなあ、という感じになっていた。こういうものを受け継ぎ、暮らし方に取り込んでいくための方法を生産者やお客さんたちと考えていきたい、と話す。

日本の伝統的な知恵がつまった多様なイベント

 「すみれや」でのイベントの数に、まずびっくりする。バラつきはあるが、週に4日イベントがはいっていることもある。ヨガ教室や、かつての農家のじいちゃん・ばあちゃんの冬仕事である稲わらの鍋敷き作りや、乾物や雑穀を使った料理教室。そこには日本の伝統的な知恵がつまっている。そして多くのイベントは、「すみれや」に来るお客さんや、納品に来る生産者などとのおしゃべりから作られているという。

 だからだろう、ぶれることがまったくない。スタッフも3年前の市議選で一緒に活動をしていた仲間で、社会的なアプローチへの意識の共有があるのも、「すみれや」の強みになっている。実際このインタビューの日も、初めてらしきお客さんが次々とはいってきてはインタビューが中断される。いくらSNSが大活躍しているとはいえ、こんなにいちげんさんがのぞきにくる店も,そうそうあるものではない。やはり、このイベントにかける思いとぶれなさが、一度のぞきたい店として異彩を放っているのだろう。

若い人たちが生産や生活をやっていける繋がりを

 「自分が農村にはいってその生活のなかで技術を学ぶというのももちろん手としてはあるし、知り合いのなかでもIターンするひとは増えているけれども、そのひとたちが生活できるようになるには、地方だけでも駄目だし、街だけでもやっていけない。ひととモノとお金が廻っていかないと、うまいことつながっていかない。私がいままでやってきたことを考えると、そっちの方が向いている。生活をしながら継承をしていく若いひとたちが、生産や生活をしつづけていけるようなネットワークを考えていきたい」

 そう言う春山さんは、おなじ意識をもったお店との生産者ツアーや、共同購入などの横のつながりや、進んで自治会にも参加し地域住民との関係も大切にしている。

 インタビューは「明るい老後計画」から始まり、最後も「明るい老後計画」のはなしであった。

―今、関心があること。個人的に今後、向っていきたい方向性などあれば?
 「<明るい老後計画>ですね。どうやったら安心して楽しく暮らせるか、ずっと考えている。実は30代のころから、シェアハウスとかに実験的に住んだりしている。今もこんな感じで住みたいというイメージはあるし、物件も探している。パートナーと呼べるひともいるけれども、それぞれ田舎と街でやりたいことをしている。結婚というかたちをとるつもりはない。プライバシーは保てて、信頼し合った友人同士で助け合える。それぐらいの距離が今はちょうど良い」。

 生き活きと「明るい老後計画」について語る姿に、インタビューのあと、もしかすると「すみれや」のレイアウトもモノや講座を通しての関係づくりも、すべてこの「明るい老後計画」につながっているのかもしれないと感じた。「すみれや」に魅力を感じて集まったひとのなかから、このひとと棲んでみたい、一緒に活動したいというひとが現れるかもしれない。春山さんにとって、そのような可能性を日々のなかで育んでいる場所。だからこその魅力が「すみれや」にはあるのかもしれない。   (編集部 矢板)

ACCESS 住所 京都市左京区田中里ノ前町49-1 叡山電鉄「元田中」駅から南東へ徒歩5分 電話 075-741-6673

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