猛暑で地球の1/3が居住不可となる

訳・脇浜義明

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 我々が体験している猛暑は世界的傾向で、明らかに人工的原因だが、メディアを通じて専門家が説明するのは高気圧の配置やエル・ニーニョの発生とかだけで、どうして高気圧がそんな配置になったのかを説明しない。ペンシルバニア州立大学のマイケル・マン教授は、『リアル・ニュース』のインタビュー(2018・8・1)で、それを説明している

北極・南極の温暖化の意味

―ギリシャで熱波と干ばつで山火事、死者91人、行方不明者25人。スウェーデンから北極圏にかけての地域でも熱波と乾燥で各地で山火事、スウェーデン政府は国際的支援を求めている。北極圏の気温は摂氏32度。スペインとポルトガルでは48度という記録的酷暑で、政府は非常事態の備え。カナダのケベック州でも暑さによる死者は90人(ほとんどが1人暮らしの高齢者)を越えた。すでに8人の命を奪ったカリフォルニアの山火事はまだ拡大する勢い。

 こういう異常現象について、マイケル・マン教授(ペンシルバニア州立大学)に話を伺います。まず北極について、なぜ北極の温暖化が他の地域よりも2倍も速いのですか。人が住んでいない北極の温暖化の意味とは。

 マン教授:海氷が急速に溶けています。氷は太陽光を反射して宇宙に戻すのですが、氷が少なくなると、海に吸収され、海水が暖かくなり、ますます氷が溶け、ますます海水が暖かくなります。これを「北極温暖増幅」と呼びます。極地方の温暖化が低緯度地方より大きくなるのは基礎物理法則です。北極(南極も)で起きていることは、北極だけに留まらないのです。

 極地方と中緯度地方の間の温度差が小さくなると、全体の気象パターンに変化が起きます。温度差があるおかげで中緯度地方のジェット気流が起きて、気象系を移動させていたのです。そのジェット気流が小さくなるから、気象系の移動が緩慢になり、同一気象系が一か所に長い間留まって災害を引き起こすことになるのです。高気圧が居座ると猛暑と干ばつ、低気圧が居座ると豪雨が、何日も続くことになります。

 現在起きている異常気象は温暖化による気候変動の結果です。単に異常であるばかりでなく、長く続くのです。同じ地域に猛暑、干ばつ、山火事、豪雨、洪水、がけ崩れなどが続くのです。
―オンライン学際ジャーナル『ネイチャー・コミュニケーションズ』に、北京や上海などがある中国の華北平原が、将来大変なことになると予測するMIT(マサチューセッツ工科大学)の研究がありました。管壁温度(バルブ温度)という概念を使った論文でしたが、それを説明してください。

 マン教授:ウエット・バルブ(湿球温度)というのは、湿度も測定して、人間が実際に体感する暑さを熱指数という形で表現するのです。人が体験する暑さは温度計で測定した気温ではなく、湿度を含んだもので、湿度が多いと汗という形で熱を発散するのが困難になって、熱が内に籠って、耐えがたくなります。その意味でウエット・バルブや熱指数は適切だと思います。熱指数が30度台を超えて、40度や50度へと上昇すると、死者が発生、人間が住めない状態になるので、温室効果ガスの濃度や地球温暖化の程度を示す警告温度となります。華北平原がこのままだとそういう事態になると警告しているのです。

 赤道付近の地帯は地球の3分1を占め、数十億人が住んでいますが、現在のペースで化石燃料を燃やす経済活動を続けておれば、もう人間が居住できない状態になると警告する研究もあります。
―MITの研究は、人口が多い農業地帯である華北平原が、今後70年間でウエット・バルブのために、いわば「グラウンド・ゼロ」になると言っています。同研究は、それを避けるためには「根本的対策」が必要と提言しています。どういう対策が必要でしょうか。

 マン教授:中高緯度の中国と同じように、熱帯地方も人間や他の生物が耐えられないようなウエット・バルブや熱指数水準が起きるでしょう。根本的対策は、本源を断つ、つまり化石燃料使用を廃止して再生可能エネルギーへ転換するしかありません。

再生可能エネルギーへの転換と数十億人の人口移動が必要に

 しかし今すぐ、パリ協定で合意した大気温度2度引き下げに向かったとしても、すでに大陸乾燥化、氷床熔解、海面上昇コースに入ってしまっているので、軌道修正には長時間かかります。とりあえずは、数十億人の人口移動に備えなければならないでしょう。

 中国は10億人、インドはそれ以上の人口で、その地域が居住不可となると、人口移動しかありません。だんだん少なくなる居住空間、だんだん少なくなる食料や水を求めて、グローバル人口が競い合います。このグローバル破局を避けるために、人類は化石燃料から再生可能エネルギーへの転換と同時に、グローバル人口移動を計画しなければなりません。

 気候変動によって大規模な環境避難民が発生し、人類が経験したことがないような安全保障問題が生じることを予測して、すでに米国防省は安全保障の見地から対策を検討しています。気候変動を最大の脅威、彼らの言葉で「脅威増幅乗数」と見ているのです。人口増と中産階層化に伴い、水、食料、エネルギー需要の増加に、地球温暖化影響が加わって、大規模移民や難民が発生し、グローバルなカオスになると見ているのです。
―最後に、今年はエル・ニーニョと反対のラ・ニーニャが発生、1月から5月にかけて太平洋の海水温度が下がりました。それがエル・ニーニョに変わったのですか。

 マン教授:この冬は太平洋東部と中央熱帯部でラ・ニーニャ現象のために温度が若干下がりました。一般にラ・ニーニャが起きると0・1度下がり、エル・ニーニョが起きると0・1~0・2度上がります。しかし、人工的原因で生じた地球温暖化の勢いは強く、そんな自然的変動を凌駕しています。エル・ニーニョだろうがラ・ニーニャだろうが、毎年暑くなるのは確実です。毎年酷暑記録が更新されるでしょう。

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