映画が終わった瞬間、この映画は三上智恵監督から、私たちヤマトンチュウに投げられた直球だと感じた。学生時代から沖縄を取材していた大矢英代さんと共に、知られざる沖縄戦を丁寧に取材した労作だ。
日本軍の特務機関「陸軍中野学校」の出身者42名が沖縄に送り込まれた。10代半ばの少年たちを選別し、特殊な訓練をし、北部山中でゲリラ戦を戦いぬくため「護郷隊」を組織した。奇跡的に生き残ったもののPTSDに30年以上苦しんだ元少年兵(89歳)の証言は重い。戦死した護郷隊員は160名にのぼる。戦後この2名の隊長は隊員の慰霊に尽力し、何度も沖縄を訪れている。少年兵を死に追いやった重い十字架を背負って戦後を生きていかねばならなかった彼らも、戦争の被害者といえる。
波照間島に青年指導員としてやってきた山下虎雄は、当初は島民との交流を深め慕われていくが、沖縄戦が迫ると豹変し、島民をマラリヤの有病地帯である西表島に強制移住させる。それだけではなく、家畜の屠殺を命じ燻製にして、船で運び出して軍の食料を調達した島民の3分の1に当たる500名がマラリヤで亡くなっている。作戦を忠実に実行した彼を、戦後、この「戦争マラリア」問題を調査した元議員が電話取材していた。
島民相互が監視しあい、スパイではと疑心暗鬼になり、密告し、従い、加担する。軍(中野学校)の作戦通りである。しかしこれらのことは「沖縄戦の過去のこと」では済まされない。秘密保護法や自衛隊法の中にそれらの文脈は、生き続けていることを映し出す。恐ろしくも私たち自身の現在とつながっていることを突きつける映画であった。各地で上映会を! (木村雅子)