フィリピン大統領ドゥテルテの「麻薬戦争」

社会活動家・ムスリムも標的に リアル・ニュース、2018・3・21 翻訳・脇浜義明

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 ドゥテルテ大統領の「麻薬戦争」による死者は2万人を超えた。しかし、彼の取締対象は薬物常用者を超え、左翼・人権活動家・社会運動家・宗教家に及んでいる。国際社会の批判に対し、彼はフィリピンを国際司法裁判所から脱退させると宣言した。以下、『リアル・ニュース』が「人民の権利向上同盟」(カラパタン)のクリスティーナ・パラバイ事務局長と、元国会議員で現在評論家として活躍しているテディ・カスィーニョにインタビューしたものを紹介する。

―あなたはドゥテルテ大統領の殺人と人権侵害の事例を集めて国際司法裁判所(ICC)に送り、ICCは調査団を派遣すると決定しましたね。
パラバイ:先日、大統領は、軍に「逆らう女性には膣に弾丸を撃ち込んでやれ」と命令。国連やICC調査員には「泥を投げつけてやれ」と指示しています。官憲の暴力や人権侵害は頻繁に起きています。

 ドゥテルテは、選挙演説で「麻薬常用者300万人を全員殺す」と言いましたが、今や、社会活動家も標的に加えました。フィリピン共産党や新人民軍の関係者をリストアップし、「テロリスト」と規定する申立書を裁判所に出したのです。この二組織は世界的にも認知された革命組織ですから、申立書自体が異常ですが、関係者とする根拠も曖昧です。

 リストアップされた個人は先住民族に関する国連特別報告者、アジア・太平洋フェミニズム運動のコーディネーター、国連機関で働く専門家たちなど、テロとは無関係の人々です。上場企業で働く市民活動家たちも含まれています。要するに、大統領を批判する人々が、監視、暗殺の対象となったのです。
――麻薬関係者が2万人殺されたと言われています。超法規的殺害はどんなふうに行われたのですか。
カスィーニョ:警察は死者数の計算を止めました。1万2千~2万人と推定されますが、それは麻薬常用者の死者数です。

 ドゥテルテは3つの戦争 ― (1)麻薬戦争、(2)テロリスト(左翼)との戦争、(3)ムスリム(ミンダナオ島先住民)との戦争 ― を行っています。最も酷いのが麻薬戦争で、警察は、殺しの作戦を行っています。相手が武装していなくても殺害するのです。警察は容疑者が反撃したと発表しますが、たいてい嘘です。自警団による殺害もあります。容疑者を、ヘルメット、マスクで顔を隠した自警団が襲って、滅多打ちにします。白昼堂々と行われる、国家的——殺人です。

 左派に対する戦争は暗殺部隊によるターゲット・キリングが多いのですが、拠点爆撃もあります。去年7月の一般教書演説で、大統領は「ミンダナオ島の先住民学校は共産主義者をかくまっているので、爆撃する」と述べました。ミンダナオ島のマラウイ市が絨毯爆撃を受けて、多数の死傷者が出ました。

支配され沈黙するメディア民衆運動で化けの皮をはぐ

―左派は、「ドゥテルテには左翼的傾向があり、左派も入閣させた」として、批判しませんでしたが…
カスィーニョ:ドゥテルテは、「左派取り込みは票集めのためのショーだった」と言っています。左派は、交渉による解決を主張しましたが、政府は休戦と降伏を求めました。一週間の交渉の後、交渉を打ち切り、全面戦争を始めました。
―ドゥテルテはICC(国際司法裁判所)脱退を宣言しました。政府の無法をどのように国際社会に訴えるのですか。
パラバイ:国連人権委員会や総会などを有効活用するには、大衆運動の盛り上がりが必要です。ICC脱退には時間がかかり、その間にICCは調査活動を行っています。私たちは国際的人民法廷を作ろうとしています。
カスィーニョ:大統領の圧力で三権分立が崩れ、人権委員会も機能していません。メディアへの圧力でドゥテルテに都合の悪いニュースが出ないため、幻想に取り付かれた民衆の間で、依然として人気が高いのです。

 これに対抗する民衆運動が必要です。公的機関やメディアはドゥテルテの支配下にありますから、人民法廷運動、デモ、集会、署名運動、口コミなど、草の根のレベルの闘争で化けの皮を剥がすのです。

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